第3章 新規機能と創薬ターゲット
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循環器疾患とアドレノメデュリン (加藤丈司・北村和雄)
アドレノメデュリン(AM)は,褐色細胞腫組織中より発見された降圧ペプチドであり,心血管組織で発現している。AMの作用の多くが心血管保護的であり,血管新生作用も有する可能性があることから,循環器疾患治療への臨床応用に関する研究が展開されてきた。高血圧や動脈硬化症への治療応用が期待されているが…… |
2. |
アドレノメデュリンを用いた心血管再生療法 (永谷憲歳・寒川賢治)
アドレノメデュリン(adrenomedullin:AM)は,血管拡張作用,利尿,ナトリウム利尿作用,アルドステロン分泌抑制作用などの多くの生理活性を有するペプチドである。近年,AMの新たな生理作用として血管新生作用,血管内皮細胞や心筋細胞のアポトーシス抑制作用,骨髄細胞の末梢への動員作用が明らかとなってきた。…… |
3. |
内分泌・摂食障害とグレリン (赤水尚史・寒川賢治)
グレリンのユニークで多彩な生理・薬理作用を臨床応用しようとする創薬研究が現在精力的に行われている。本稿では,グレリンの内分泌・摂食作用に関する創薬研究を述べる。成長ホルモン(GH)分泌促進作用と摂食促進作用に対して,それぞれ対象疾患が探索され,一部ではすでに臨床試験が実施されている。…… |
4. |
カヘキシアとグレリン (大西俊介・永谷憲歳・寒川賢治)
カヘキシアは癌や慢性閉塞性肺疾患などの慢性疾患により生じる体重減少,骨格筋量の減少および食欲不振により衰弱した状態をさし,様々なサイトカインが関与して骨格筋におけるタンパク合成の抑制やタンパク分解の促進をきたす。グレリンは主に胃から分泌される末梢性ペプチドであり,迷走神経求心路で受容体と結合し,…… |
5. |
骨軟骨代謝とCNP (八十田明宏・中尾一和)
ナトリウム利尿ペプチドファミリーのうちANP,BNPは循環器領域における創薬や臨床展開の華々しい成功例として認知されている。新たに,CNPが骨伸長促進因子であることが証明され,臨床展開のターゲットとなった。対象疾患は骨伸長障害を主徴とする骨系統疾患であり,その強力な作用に期待がかかる。しかし,ペプチドであるがゆえの課題も多く,創薬に際しては広くCNP-GC-B系の賦活化を視野に入れた多方面からのアプローチが必要である。 |
6. |
循環器疾患におけるCNP の意義 (岸本一郎・添木 武・徳留 健・堀尾武史・寒川賢治)
第三のナトリウム利尿ペプチドであるCNPは,血管壁や心臓において生合成・分泌されることが証明されており,循環器系の局所因子として病態生理的意義が示唆されている。また,投与したCNPが,傷害血管の内膜増殖を抑制し再内皮化を促進すること,…… |
7. |
肥満,代謝疾患とペプチド (水田雅也・中里雅光)
肥満と肥満に基づく代謝疾患に対する基本的な治療は,食事・運動療法による体重コントロールであることは言うまでもないが,近年,新たな肥満関連ペプチドや既知のペプチドの新しい抗肥満効果が報告されている。本稿では,これらの中で創薬につながる可能性の高いペプチドとして,…… |
8. |
ニューロメジンU と生体リズム,ストレス (児島将康・井田隆徳・佐藤貴弘)
平滑筋の収縮ペプチドとして単離・精製されたニューロメジンUは,中枢神経系においては摂食抑制,ストレス反応の制御,生体時計の調節など,また末梢組織においては痛覚制御や炎症反応への関与など,様々な生理作用を示す。2005年にはニューロメジンUにホモロジーが高い新規生理活性ペプチドのニューロメジンSが発見され,…… |
9. |
オレキシンと創薬:睡眠と覚醒のコントロール (桜井 武)
オレキシンの欠損がナルコレプシーの病因であることから,オレキシンは覚醒・睡眠制御において重要な役割を担っていると考えられている。近年,オレキシン産生神経の入出力系の解明により,情動や摂食行動の制御系,覚醒制御システムとの相互の関係が明らかになってきた。オレキシン神経は,…… |
10. |
神経ペプチドPACAP -新しい創薬標的分子探索へ (馬場明道・橋本 均・新谷紀人)
統合失調症をはじめとする精神疾患や代謝性疾患の糖尿病などの多因子性疾患は,遺伝要因,発達および環境要因などの多因子が長期的かつ複雑に影響し発症する。これら疾患の治療薬の歴史からも明らかなように,病態における関連シグナル系の分子基盤を明らかにすることは病態解明にとどまらず,特異的な新しい創薬標的候補分子を提示することにもつながる。…… |
11. |
メラニン凝集ホルモン(MCH)と摂食・うつ (長崎 弘・斎藤祐見子)
メラニン凝集ホルモン(MCH)は哺乳類では視床下部外側野に著しく局在する。そのノックアウトマウスは「ヤセ」であるため,摂食中枢の下流に位置する分子として大きな注目を集めた。1999年にオーファンGPCRの利用によりMCHの受容体が同定され,選択的アンタゴニストの開発および行動薬理解析が進展する。意外なことにMCHアンタゴニストは…… |
12. |
新しいGPCR リガンド:機能と創薬 (井上金治・足立幸香)
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)と,そのリガンドは生体の機能制御に関わり医学上重要である。また,ヒトゲノム情報から内因性リガンドが未同定のオーファン受容体が多く発見されている。そして,これらのリガンドの探索に向けた逆薬理学的研究により,これらのオーファンGPCRの内因性リガンドが次々と発見されてきている。…… |
13. |
癌ペプチドワクチン (山田 亮)
細胞傷害性T細胞(CTL)は癌細胞上のHLA分子に結合したペプチドを認識する。このペプチドを投与し,患者体内でCTLを増殖させ,癌細胞の排除を誘導しようというのが癌ペプチドワクチン療法である。ワクチンペプチドには生理活性はなく,抗原性以外の薬理作用もない。また癌局所に移行する必要もない。個々の患者に最適なペプチドを…… |
14. |
プロテアーゼインヒビターからの創薬 (木曽良明・濱田芳男)
プロテアーゼはタンパク質の分解やプロセシングを通して,ウイルスから人間のような高等生物までのあらゆる生命活動の局面において,何らかの重要な機能を果たしている。このことから,ある特定のプロテアーゼを特異的に阻害したり活性を調節できれば,様々な疾病に対する治療薬が創製できる可能性がある。創薬としてのプロテアーゼ阻害薬の例として,…… |
15. |
ディフェンシン:自然免疫で活躍する抗菌ペプチド (川畑俊一郎)
抗菌ペプチドは,多細胞生物の自然免疫の主役であり,なかでもディフェンシン(defensin)は,生物の棲息環境に適応進化して多様な機能を獲得した抗菌ペプチドのファミリーである。哺乳類においては,ディフェンシンの構造的特徴からα,β,θの3つのサブファミリーに分類される。これらのディフェンシンは,好中球のアズール顆粒,…… |