第3章 細胞の利用 |
1.成熟細胞 |
1) |
軟骨細胞 (星 和人・高戸 毅)
軟骨再生医療は比較的臨床応用が進み一定の成果を得ているが,今後,さらに適応を拡大するためには,より大型で十分力学的強度を有する再生軟骨をin vitroで作製する必要がある。そのための細胞学的な課題としては,(1)無血清培地の開発,(2)増殖培養における脱分化の抑制,……
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2) |
耳介軟骨細胞移植 (矢永博子)
近年,細胞を利用して種々の生体組織を再生誘導する治療が試みられている。筆者は長年行ってきた基礎研究を基に2001年より自家培養耳介軟骨細胞の臨床応用を行ってきた。この方法では,わずか1cm2 の軟骨片を採取し,生体外で大量に培養した軟骨細胞を再び生体へ移植し,……
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2.前駆細胞,幹細胞 |
1) |
脂肪 (吉村浩太郎)
脂肪組織には,脂肪細胞の前駆細胞であり血管の前駆細胞の性質も兼ね備える間質細胞が存在する。この間質細胞の一部は間葉系幹細胞とほぼ同等の性質をもち,間葉系のみならず胚葉を超えた多分化能をもつことが知られている。脂肪組織は脂肪吸引術により比較的簡単に大量の組織が採取可能であるとともに,……
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2) |
末梢血管・心臓血管:ヒト心臓由来幹細胞を用いた心不全への再生医療 (小出正洋・星野 温・山口真一郎・岸田 聡・竹原有史・王 英正・松原弘明)
重症心不全は,最新の医療技術をもってしてもなお予後不良であり,すべての循環器医にとり克服すべき病態である。心不全への再生医療は心筋壊死領域が広範囲であったり,支配冠動脈が開通しているときには,骨髄細胞を利用した血管再生医療だけでは不十分であり,心筋細胞の補充(心筋再生医療)が必要になる。急性心筋梗塞(AMI)のPCI
治療後に骨髄単核球を冠動脈から注入する血管新生治療が……
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3) |
末梢血管・心臓血管:末梢血単核球細胞移植による血管再生治療とそのメカニズム (舘野
馨・南野 徹・小室一成)
慢性重症下肢虚血症例に対する自家細胞移植療法は,血管再生治療として広く臨床応用されており,その安全性と有用性が明らかとなりつつある。しかし,その詳細な治療機序は必ずしも明確とはなっていない。われわれは末梢血単核球細胞移植療法の臨床応用,およびbedsideto
bench 研究を精力的に行っている。……
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4) |
末梢血管・心臓血管:骨髄細胞移植による血管再生療法 (室原豊明)
重症虚血性心疾患や末梢動脈閉塞症の治療には,まず生活習慣の改善,次に薬物療法,カテーテルによる血管形成術や外科的血行再建術が行われる。しかしながら,病変が末梢にあるなど従来の治療法が無効あるいは不可能な症例も多い。有効な治療法のない重症虚血性疾患に対する新たな治療法の開発が求められてきた。……
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5) |
末梢血管・心臓血管:間葉系幹細胞を用いた心血管治療 (永谷憲歳)
心臓,特に心不全に対する再生医療として,骨格筋芽細胞,骨髄単核球,間葉系幹細胞を用いた細胞移植治療が実際の臨床で試みられるようになってきた。さらに,細胞移植効果を高めるための第二世代の再生医療の開発がスタートし,細胞と成長因子の併用や細胞シートを用いたハイブリット治療が行われるようになってきた。……
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6) |
末梢血管・心臓血管:虚血性疾患に対するEPCを中心とした自家細胞移植治療 (伊井正明・浅原孝之)
近年,慢性下肢虚血疾患や虚血性心疾患に対する自家細胞移植治療がわが国を含め,世界各地で行われるようになった。移植細胞としては,骨髄または末梢血由来の非選択性単核球細胞や選択性幹・前駆細胞(CD34/CD133
陽性細胞)が用いられているが,治療における有効性および安全性という点では後者で好ましい成績が集積されつつある。……
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7) |
骨格筋筋芽細胞シートは心筋自己修復機転を誘導する (澤 芳樹)
重症心不全患者に対する心機能回復戦略として,細胞移植法が有用であることが報告されており,すでに自己骨格筋筋芽細胞による臨床応用が欧米で開始されている。われわれは,温度感受性培養皿を用いた細胞シート工学の技術により,細胞間接合を保持した細胞シート作製技術を開発し,従来法であるneedle
injection 法と比較して,……
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8) |
角膜:角膜上皮前駆細胞・幹細胞 (林 竜平・西田幸二)
角膜は透明な無血管組織であるが,疾患や外傷により透明性は低下する。透明性低下により視覚障害に至った患者に対しては,ドナー眼を用いた角膜移植が実施されているが,国内においてはドナー不足,また特に角膜上皮疾患においては拒絶反応が問題となっている。われわれはこれらの問題を解決すべく,……
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9) |
角膜:培養角膜上皮シートの臨床応用 (川北哲也・坪田一男)
角膜は外界からの物理的ならびに化学的な刺激,さらに生物的な攻撃に対して生体を守る重要な組織である。正常な角膜上皮が損傷すると,角膜輪部基底層に存在する角膜上皮幹細胞の動員が促され,再上皮化が得られる。スティーブンス・ジョンソン症候群などの重症性瘢痕性角結膜疾患では,角膜上皮幹細胞疲弊が起こっており,……
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10) |
培養骨膜シート移植を応用した歯周組織再生治療 (奥田一博・川瀬知之・山宮かの子・吉江弘正)
培養骨膜シートを多血小板血漿とハイドロキシアパタイト顆粒混合移植材とともに歯周骨内欠損部に投与して,術後1年目の歯周組織再生量について対照群と比較した。歯周ポケット減少量は両群間に差はなかったが,付着の獲得量,X
線的骨再生量についてはテスト群で統計学的に有意に改善した。……
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