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内容目次 |
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● 目で見てわかる遺伝病
−消化器内科編 5 |
| シリーズ企画 |
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| 特集: |
わが国のゲノムコホートが拓く未来医療・予防 |
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巻頭言:社会のインフラとしてのコホート研究
(田原康玄) |
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いわて東北メディカル・メガバンク機構における個別化予防の実現に向けた取り組み
(丹野高三) |
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東北メディカル・メガバンク計画(TMM計画)では,東日本大震災・津波の復興支援と個別化医療・予防の開発・提供を目的に,東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)と岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)が連携・協力し,大規模前向きゲノムコホートとバイオバンクを構築・運営している。本稿では,まずIMMにおける地域住民コホート調査の概要を報告する。また個別化予防の実現に向けた取り組みとして,日本人集団に適したポリジェニックリスクモデル,エピゲノム年齢推定式の開発,新たに開始された社会実装研究を紹介する。
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| 2. |
東北メディカル・メガバンク計画の進捗状況と個別化予防への貢献
(寳澤 篤) |
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東北メディカル・メガバンク計画(TMM計画)は,東日本大震災の復興と次世代医療開発を目的に2012年に始動した。地域住民・三世代コホート調査で約15.7万人の大規模な生体試料と健康情報を収集し,複合バイオバンクと統合データベースを構築した。基盤解析として「日本人全ゲノムリファレンスパネル(61KJPN)」などを整備。成果として,遺伝リスク(PRS)と生活習慣リスクの組み合わせが生活習慣病(糖尿病,高血圧など)の発症に深く関わることを示し,個別化予防の重要性を確認した。また,遺伝情報の回付も実施し,個別化ゲノム先制医療の社会実装を加速している。
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鶴岡メタボロームコホート研究(TMCS)
(原田 成・飯田美穂・土岐了大・平田あや) |
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鶴岡メタボロームコホート研究(TMCS)は,山形県鶴岡市在住の男女11,002名を対象として2012年より開始した長期追跡研究である。地域住民のゲノム・メタボロームを含む様々な生体情報を統合的に解析することで,precision prevention(精密予防)の社会実装に資するエビデンスの構築を目指している。生活習慣病・循環器病予防,加齢や女性の健康など多様な領域における研究成果を報告しており,得られた知見が地域社会の健康増進に寄与することが期待される。
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| 4. |
多目的コホート研究,次世代多目的コホート研究におけるゲノムコホート基盤の構築
(澤田典絵・岩崎 基) |
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国立がん研究センターでは,1990年に多目的コホート研究を,2011年に次世代多目的コホート研究を開始し,ともに10万人規模の住民コホート研究を構築している。多目的コホート研究では,遺伝的リスクスコアを含む複数の環境-遺伝子交互作用に関する論文が報告されており,次世代多目的コホート研究では,約5〜6万人規模のゲノムコホート基盤が構築されている。ゲノムコホート基盤の課題を認識しながら,将来的には,個別化予防を同じ目的とした他の分子疫学コホート研究と,国際的競争力のもてる大規模分子疫学コホートにすべく,協力していくことが必要であると考えている。
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バイオバンク・ジャパン
(森崎隆幸) |
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バイオバンク・ジャパンは2003年開始の国内最大規模の疾患バイオバンクで,参加者26万人,疾患患者44万症例の協力により,ゲノム医療をめざす事業である。ほぼ全例でゲノム情報が獲得され,全ゲノム配列解析やオミックス情報獲得も進み,収集保管された臨床情報とともに,臨床応用にむけ,多くの研究者に利用され,これまでに大きな成果を上げている。本稿は,バイオバンク・ジャパンのこれまでの事業の経緯と成果,今後の展望にむけた取り組みについて概説する。
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| 6. |
静岡多目的コホート研究事業〜しずおかコホート
(田原康玄) |
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静岡多目的コホート研究事業(しずおかコホート)は,2021年にスタートしたわが国で最も新しい地域住民コホートである。静岡県内の各地にコホートを設定し,2万人を当面の目標として試料と臨床情報の収集を開始した。多くの共同研究者が連携する特徴を活かし,高い精度で収集した多様な臨床情報をもつゲノムコホートであることが大きな特徴である。現時点では試料と情報の収集に力点を置いているため,本稿ではコホートの設計や取り組みについて概説する。
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| 7. |
日本多施設共同コーホート研究(J-MICC Study)
(松尾恵太郎・尾瀬 功・小柳友理子) |
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日本多施設共同コーホート研究(J-MICC Study)は,日本人におけるがんや生活習慣病の予防研究基盤を構築するために2005年に設立された,14サイト約10万名からなる本邦初の大規模分子疫学コホートである。ベースライン調査,第二次調査により収集された質問票による生活習慣・既往歴・食習慣等の詳細情報に加え,血清・血漿・DNA を含む高品質な生体試料,健康診断データを保有し,さらに7万件超の遺伝子多型データやプロテオミクス・メタボロミクスを含むオミクス解析基盤を整備している。本稿ではその概要を示す。
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| 8. |
ながはま0次予防コホート事業
(川口喬久・松田文彦) |
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ながはま0次コホート(The Nagahama Prospective Genome Cohort for Comprehensive Human Bioscience)は,京都大学大学院医学研究科と滋賀県長浜市の共同事業による多目的ゲノムコホートである。本コホートは「0次予防」という概念に基づき,個々人の遺伝的背景,体内の詳細なバイオマーカー,臨床情報,環境・生活習慣を統合的に収集・解析することで,疾病の個別化予防と早期診断の実現を目指すための情報基盤となっている。事業は2007年に開始し,これまで約1.2万人のコホート参加者の協力のもと,主に「0次健診」と称する5年おきの健康診断を通じて,一般的な健康診断や質問票,医療情報に加え,睡眠や脳画像,社会関係資本調査などの特徴的な検査や調査,ゲノム・オミックス解析など,学際的な情報を数多く収集してきた。現在は,第3回追跡調査を通じて基盤のさらなる拡充を図るとともに,予防医療に対する新たな切り口の提示を図るべく,学内や他施設との共同研究,産学連携などを通じた試料・情報の利活用を推進している。
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| 9. |
沖縄バイオインフォメーションバンク
(松波雅俊・今村美菜子) |
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琉球列島は日本列島の南端に位置し,そこに居住する人々は独自の遺伝背景を有することが知られている。琉球大学医学部では,沖縄の地理的・遺伝的特性を活かした研究基盤の構築を目的として「沖縄バイオインフォメーションバンク」を設立し,沖縄県民の医療情報およびゲノムDNAを含む包括的な研究リソースの整備を進めている。本バンクに登録された琉球集団を対象とした集団遺伝解析および疾患ゲノム研究を通じて,地域特異的な遺伝背景や疾病構造の解明を図り,沖縄県民に最適化された医療の実現ならびに国際的に有用な知見の創出に取り組んでいる。
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● Learning①
〈遺伝性疾患(遺伝病),
難治性疾患(難病)を学ぶ〉 |
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Campomelic dysplasia
(鬼頭浩史) |
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campomelic dysplasiaは特徴的な顔貌,四肢長管骨の弯曲と短縮,肩甲骨の低形成,性分化異常などを特徴とする骨系統疾患で,軟骨細胞の分化や性分化に必須の役割をもつSOX9 遺伝子の異常によって発症する。喉頭気管軟化症に伴う呼吸障害は必発し,新生児期・乳幼児期の死亡率が高かったが,呼吸管理の向上により長期生存例も散見される。乳幼児期には頸椎後弯変形による頸髄症に注意を要する。次第に長管骨の弯曲は改善するが,脊柱後側弯変形は進行する。QOLを保つためには,これら整形外科的合併症への対応が重要となる。
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SOD1 遺伝子検査とトフェルセン
(岩田育子) |
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SOD1 遺伝子は1993年の同定以降,本邦の家族性ALS(筋萎縮性側索硬化症)においてH47RやL127Sなどのバリアントが報告され,家族性ALS症例で見出される原因遺伝子の約40%を占めてきた一方,海外においては創始者効果を認める変異の存在など,多様なバリアントとその臨床的特徴を有する。SOD1 を標的とするトフェルセンはCSF-SOD1タンパク質とNfLを低下させ,早期投与で機能低下を抑える可能性がある。今後はAAV-miRNAやCRISPR/Cas7などによる持続的な治療法の開発が期待されており,相補的な治療ストラテジーの確立が期待されている。
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DNA二本鎖切断を利用しないゲノム編集法
(中田慎一郎) |
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CRISPR/Cas9の登場により,遺伝性疾患治療は補充療法から病因変異を直接修復する精密遺伝子治療へと発展することが期待されている。Cas9を用いる場合,DNA二本鎖切断(DSB)に起因する目的外変異の発生が問題となる。これに対し,ニッカーゼを用いたSNGD法やNICER法では,DSBを伴わずに高精度な変異修復が可能である。また,base editingやprime editingでは,塩基置換や小規模挿入・欠失を高効率に導入することができる。本稿では,これらの多様なゲノム編集技術の概要と実際の利用方法について概説する。
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● Genetic Counseling
〈実践に学ぶ遺伝カウンセリングのコツ〉 |
| シリーズ執筆 |
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ミトコンドリア病の着床前遺伝学的検査(PGT-M)の遺伝カウンセリングの実際
(四元淳子・上村のぞみ) |
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PGT-M(monogenic disordersを対象とした着床前遺伝学的検査)における遺伝カウンセリングは,患者・家族の希望と医学的適応,学会見解および倫理運用の三者を丁寧に接続する実践であり,適切な対応が必要とされる。本稿では,承認実施施設でのミトコンドリア病のPGT-Mの遺伝カウンセリングにおける,JSOG(日本産科婦人科学会)の公開情報に基づく留意点とカウンセリングの実施手順を紹介するとともに,国内ではまだ実施数の少ないミトコンドリア病(Leigh脳症)のPGT-Mの遺伝カウンセリングの実際とTipsを紹介する。
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● CGC Diary
〈私の遺伝カウンセリング日記〉 |
| リレー執筆 |
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認定遺伝カウンセラーと生殖補助医療胚培養士,ダブルライセンスの働き方
(小林亮太) |
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● Ties 絆
〈当事者会、支援団体の紹介〉22 |
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あかるく あせらず あきらめず 〔全国SCD・MSA友の会〕
(丸山裕美) |
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● NEXUS
〈ヒト以外の遺伝子に関連する研究〉 |
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三毛猫の毛色を決める遺伝子の発見〜60年越しで解明された「オレンジ毛」の謎〜
(藤 英博・佐々木裕之) |
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三毛猫やサビ猫がほぼメスであるのは,オレンジと黒の毛色を決める対立遺伝子がX染色体上にあり,メスでは2本のX染色体の片方が細胞ごとにランダムに不活性化されるためである。この説は1961年に提唱されたが,オレンジと黒の毛色を決める「オレンジ遺伝子」の正体は長らく不明であった。そこでわれわれは,国内外の猫のゲノム解析に加えて,遺伝子発現解析およびDNAメチル化解析を統合的に行い,オレンジ遺伝子の正体がARHGAP36 であることを明らかにした。本稿では,その概要を紹介する。
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〔原著〕希少染色体異常症に関する医療者から患者・家族への情報提供と,その情報収集の現状
(仲間美奈・松ア佐和子・原田佳奈・金子実基子・増井 薫・長谷川結子・川目 裕・沼部博直) |
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本研究は,希少染色体異常症に関する医療者から患者・家族への情報提供と,その情報収集の実態を明らかにすることを目的とした。医療者を対象にアンケート調査を行い,有効回答73件を分析した結果,GeneReviews®やOMIMが主な参照資源として利用されていたが,医学的情報に比べて心理社会的側面に関する情報の検索には限界が認められた。Uniqueは情報資源として有用と評価されており,患者・家族の情報源としてSNSの利用も多いことが示唆された。信頼性の高い情報資源と情報プラットフォームの整備が求められる。
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| ● 編集後記 |
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