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内容目次 |
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● 目で見てわかる遺伝病
−消化器内科編 2 |
シリーズ企画 |
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特集: |
心臓血管疾患の遺伝学的検査と遺伝カウンセリング:
2024年日本循環器学会ガイドラインから |
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巻頭言:
心臓血管疾患の遺伝学的検査と遺伝カウンセリング〜2024年改訂日本循環器学会/日本心臓病学会/日本小児循環器学会合同ガイドライン発表に寄せて〜
(稲垣夏子・今井 靖・古庄知己) |
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1. |
ガイドライン改訂の趣旨
(今井 靖) |
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日本循環器学会は「心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン」を循環器領域各学会の協力体制の下,13年ぶりに2回目の改訂を実施し,2024年3月,日本循環器学会学術集会初日に公開した。循環器領域においても,遺伝学的検査が少なくとも一部は保険診療となり,日常診療で実施される場合が増え重要性が増しつつある。
遺伝学的検査の実施体制および患者・家族へのカウンセリングの整備・充実,さらに遺伝専門職と循環器領域の専門医の協力体制が重要と考えられる。
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2. |
心臓血管疾患の遺伝医療
(稲垣夏子) |
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遺伝性循環器疾患に対する医療の重要性が高まり,循環器領域における遺伝学的検査および遺伝カウンセリングの実践が求められている。このような背景のもと,「心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン」が改訂され,循環器専門医と遺伝医療の専門家が連携した診療体制の確立が推進されている。本稿では,遺伝医療の臨床実装に向けたいくつかの課題を抽出し検討した。13年ぶりに改訂されたガイドラインの活用を通じて,心臓血管疾患における遺伝医療の発展とチーム医療のさらなる充実が期待される。
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3. |
心臓血管疾患の遺伝カウンセリング
(西垣昌和) |
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遺伝性心臓血管疾患のactionabilityの向上に伴い,遺伝学的検査の保険適用が拡大し,mainstreaming遺伝学的検査やcascade screeningの実装が進んでいる。それに伴い,遺伝カウンセリングの役割も変化しつつある。本稿では,actionabilityの高い疾患群である遺伝性心臓血管疾患におけるアウトカム志向の遺伝カウンセリングのあり方を論じる。
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4. |
心臓血管疾患の遺伝学的検査
(山口智美) |
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心臓血管疾患における遺伝学的検査は,遺伝学的確定診断を通じた疾患受容,健康管理,治療法選択,急性イベントの発症予防,予後予測を目的として行われるほか,未発症血縁者の早期診断・早期介入にも有用である。診療の一環として行われる遺伝学的検査は,定められた施設基準に従い,衛生検査所および医療機関において実施される。信州大学医学部附属病院遺伝子医療研究センターにおいて主として実施している次世代シークエンスパネル解析の概要,対象遺伝子,バリアントの評価,検出限界などを詳細に示す。より多くの患者に精密医療を提供するために,さらなる発展と普及が期待される。
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5. |
循環器遺伝医療の今と将来〜先天性心疾患の遺伝子医学の歩みに触れながら〜
(井上 忠・山岸敬幸) |
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日本循環器学会および関連合同学会による「心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン」が13年ぶりに改訂され,その内容はガラリと変わった。同時に遺伝医療を専門とする学会においても,循環器領域の熱量が高まっている。先天性心疾患の遺伝子医学も,遺伝学的解析・検査技術の目まぐるしい発展を受けて新たな時代に突入した。今まさに循環器領域では,各疾患群に遺伝子医学を生かすことができるようになり,遺伝医療においてエキサイティングな領域になっている。今後さらに,疾患の成因解明や個別化医療・カウンセリングへの発展が大いに期待される。
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1. |
遺伝性心筋症
(野村征太郎) |
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心筋症の発症には遺伝要因と環境要因が関与し,ゲノム解析の進展により分子レベルでの病態理解に基づいた精密医療を考える時代となった。これらの科学的エビデンスに基づいて,2024年3月に「心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン」が発表された。特に本稿では肥大型心筋症・拡張型心筋症に注目して,それぞれの遺伝学的検討の現状と将来展望について概説し,これらの疾患の診断・層別化に遺伝学的検査がいかに重要であるか議論したい。
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2. |
遺伝性不整脈に対する遺伝学的検査の臨床的意義
(相庭武司) |
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遺伝性不整脈は致死性不整脈(心室頻拍や心室細動)を惹起する可能性があり,心臓突然死に関係するため,遺伝学的検査の結果は診断のみならず,治療,サーベイランス,予後に直結する。しかし不整脈疾患の場合,同一の遺伝子変異を有しても表現型や重症度にばらつきがあり,必ずしも浸透率は高くない。遺伝学的検査結果の解釈には臨床所見とバリアント情報の両エビデンス・知識が不可欠である。遺伝学的検査の実施においては,結果を正しく解釈し患者・家族に説明できる体制,遺伝カウンセリングが極めて重要である。
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3. |
遺伝性結合組織疾患(マルファン症候群/ロイス・ディーツ症候群/エーラス・ダンロス症候群)
(古庄知己) |
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遺伝性結合組織疾患は,結合組織を構成する成分の遺伝的な異常に起因する疾患群である。循環器(小児科・内科)領域で重要な遺伝性結合組織疾患であるマルファン症候群,ロイス・ディーツ症候群,血管型エーラス・ダンロス症候群について,疾患概要,遺伝学的検査,遺伝カウンセリング,遺伝医療の実践について概説する。最新のエビデンスに基づき最適なマネジメントを計画する循環器医療部門と遺伝学的検査・遺伝カウンセリングを通じて発端者のみならず血縁者の健康にも役立てる遺伝子医療部門のさらなる協働が求められている。
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4. |
家族性高コレステロール血症
(斯波真理子) |
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家族性高コレステロール血症(FH)は,LDL代謝経路に関与する遺伝子変異により発症する常染色体顕性遺伝(優性遺伝)疾患であり,生下時からの高LDL-C血症,早発性冠動脈疾患,黄色腫を特徴とする。
FHの診断には,高LDL-C血症,黄色腫,家族歴が重要であり,遺伝学的検査の活用が推奨される。FHの原因遺伝子には,LDL受容体(LDLR ),アポリポタンパクB(APOB ),PCSK9 などがあり,これらの遺伝子変異がFHの病態に深く関与している。
FHの早期診断と適切な治療は,患者の予後改善に直結する。遺伝学的検査の保険適用により診断率が向上し,今後のさらなる予後改善が期待される。
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5. |
肺動脈性肺高血圧症
(片岡雅晴) |
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肺動脈性肺高血圧症(PAH)において,遺伝カウンセリングと遺伝学的検査の実施は,正確な診断分類のためだけでなく,個別化治療のためにも重要となる。RNF213 p.R4810Kバリアントは,日本を含む東アジア圏の創始者変異であり,欧米では検出されないが,日本人PAH患者の1割弱はこのバリアントをヘテロで保有しており,予後不良因子である。また,患者のみでなく,PAH関連遺伝子の未発症バリアント保有者および遺伝性PAH患者の第1度近親者に対する,PAHの発症リスクに関するカウンセリングと年1回のスクリーニング検査の実施が推奨される。
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重症複合免疫不全症の診断と治療
(植木将弘・山田雅文) |
重症複合免疫不全症(severe combined immunodeficiency:SCID)はT細胞の著減または著しい機能低下を背景として,重篤な易感染性を呈する疾患である。根治治療である造血細胞移植が行われなければ,生後1年以内にほぼすべての患者が感染症などにより死亡する。SCIDは感染歴および感染症に伴う成長障害や体重増加不良などの徴候をきっかけに,血液検査で本疾患の主要な特徴の一つであるT細胞減少を確認し,遺伝学的検査によって診断される。診断後には感染症の治療および予防を行うと同時に,根治治療である造血細胞移植が必要である。早期診断と感染症治療法の向上,造血細胞移植の進歩により患者の生存率は上昇しているが,感染症のコントロールに難渋する患者や全身状態が不良な患者の治療成績は必ずしも良好ではない。
近年では感染症の罹患前にSCIDを診断するために,濾紙血を用いた新生児スクリーニング検査が広がり,国内外でその有用性が報告されている。現在は公費による全例検査ではなく選択制であるため,今後は受検率の向上と公費による全例検査が望まれている。
現在,日本でのSCIDに対する根治治療は造血細胞移植のみであるが,遺伝子編集技術の進歩により遺伝子治療の研究が進んでおり,今後の発展・臨床応用が期待されている。
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● Learning①
〈遺伝性疾患(遺伝病),
難治性疾患(難病)を学ぶ〉 |
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デュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィー
(江浦信之・杉江和馬) |
筋ジストロフィーは進行性の筋力低下・筋萎縮をきたす遺伝性筋疾患群で,最も頻度の高いデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)とベッカー型筋ジストロフィー(BMD)はいずれもジストロフィン(DMD )遺伝子変異を原因とする。近年,エクソンスキッピングや遺伝子治療,非ステロイド薬など治療法の開発が進展しており,患者の予後改善が期待されている。一方で,適応や副作用・安全性などの課題もあり,今後はDMD 遺伝子変異ごとの個別化医療や複合治療の最適化が求められることが予測される。
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PGT-A/SRについて
(小西晴久・門上大祐・中岡義晴) |
着床前遺伝学的検査(PGT)は,体外受精で得られた胚の染色体異常を検出し,正常胚を選択して移植するという生殖医療と遺伝医療を両輪として発展してきた技術で,実臨床において妊娠成績向上や流産リスク軽減に寄与している。しかし診断精度には限界があり,偽陽性や偽陰性の可能性があり,各施設ごとにチャートを評価し検査結果の慎重な解釈が求められる。またモザイク胚の存在,高年齢層での正常胚を取得する困難さなども課題である。これらをカウンセリングを通じて患者と情報共有することが重要である。
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臨床検体を用いた希少がん研究の課題と展望
(近藤 格) |
希少がんは症例数の少なさから診断・治療法の整備が遅れている。「症例が少なく研究用の臨床検体を得がたい」ことが,すべての希少がんに共通する課題である。この課題に対応する手段として,古い病理標本をプロテオーム解析に活用することが考えられる。また,バイオバンクの利便性を高めることで,がん研究に必須である患者由来がんモデルの樹立と普及が進むだろう。遺伝子異常に基づいて細分化されたがんの研究においても,希少がん研究における取り組みが大いに役立つだろう。
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● Genetic Counseling
〈実践に学ぶ遺伝カウンセリングのコツ〉 |
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AYA世代のLi-Fraumeni症候群における包括的支援
(利田明日香・石原美紗子・阿部明子・新津宏明・檜井孝夫) |
Li-Fraumeni症候群(LFS)は,がん抑制遺伝子であるTP53 の生殖細胞系列に病的バリアントを保持する人に発症する,常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式を呈する遺伝性腫瘍症候群の一つである。LFSの浸透率は非常に高く,発端者が確定診断された際には血縁者も含めた包括的な支援が重要である。
がんゲノムプロファイリング検査の普及に伴い,二次的所見を契機にLFSと診断される機会も増加している。今回は,心理社会的側面における課題に着目しながらAYA世代のLFSの患児とその血縁者への包括的支援の方法について検討したい。
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● CGC Diary
〈私の遺伝カウンセリング日記〉 |
リレー執筆 |
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クライエントの声に耳を傾けて−遺伝カウンセリングの現場より−
(小田いつき) |
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● 編集後記 |
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