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先端生物医学研究・医療のための遺伝子導入テクノロジー
ウイルスを用いない遺伝子導入法の
材料,技術,方法論の新たな展開
編集: 田畑泰彦京都大学再生医科学研究所生体材料学分野教授

本書籍をご購入の場合は ……………… 1冊 本体 5,000円+税

要 旨

(第4章)

第4章 遺伝子導入のための細胞生物医学とその関連技術
1. エンドサイトーシス経路における選別輸送 (大橋正人)

細胞はエンドサイトーシスにより細胞内小器官であるエンドソームに物質を取り込む。エンドソームの機能の本質は,物質を選択的に取り込み,分解されるべき分子をリソソームに運び,そうでないものはそれぞれの行き先に応じて仕分けして送り出すという選別機能にある。様々な生理現象がエンドサイトーシス経路の選別輸送によって制御されている。選別輸送のメカニズムの基盤は特異的膜ドメイン形成と特異的膜融合であり,タンパク質・脂質の動的複合的な分子間相互作用によって,駆動制御されていることが明らかとなってきている。
2.

核膜孔複合体:核−細胞質間分子流通のメディエーターとしての機能と構造 (今本尚子)

核膜孔複合体は,核と細胞質の間を分子が往来するときに利用する唯一の通り道である。1つの核膜孔は,高い選択性を保ちながらも,1秒間に1000分子にも及ぶ膨大な数の分子を通過させる能力をもつ。近年,核膜孔複合体を通過する運搬体分子の構造や,複合体を構成する因子の理解が飛躍的に進み,謎の多い核膜孔複合体の性質を知るうえでいくつかの重要な知見が蓄積されてきている。自然が作り上げたこの巧みな分子装置の理解は,生命現象の基礎的理解につながるだけでなく,遺伝子デリバリーなどの応用面の研究にも重要である。

3. ウイルス感染のメカニズム (中西真人・瀬川宏知・江口暁子))

lipoplexやpolyplexなどの非ウイルスベクターに比べて,組換えウイルスベクターによる遺伝子導入は非常に効率がよい。そこで,ウイルスが細胞に感染するメカニズムを解明し,ウイルスの機能を人工的に再構築することで理想的な非ウイルスベクターを開発するアプローチが提唱されている。本稿では,ウイルスが細胞に感染するメカニズムについての研究の現状を紹介し,非ウイルスベクターへの応用の可能性について考察する。
4.

細胞内導入 (二木史朗)

遺伝子(DNA)は負電荷に富み,分子量・分子サイズも非常に大きく,そのままでは細胞膜を通過しない。遺伝子導入においては,これを何らかの形で細胞膜を通過させなければならず,これまでに,マイクロインジェクション,エレクトロポレーションなどの機械的・物理的方法や,リポソームや合成高分子などのキャリアと複合体を形成させて細胞内に移送する方法などが用いられてきた。本稿では,これらの方法を概観するとともに,最近注目されている膜透過ペプチドを用いた遺伝子導入の試みについても紹介する。

5. 細胞特異的遺伝子デリバリー ((片山佳樹・新留琢郎)

細胞選択的に遺伝子をデリバリーする技術は,高効率で副作用の少ない遺伝子治療を実現する。そのために,体内に投与された後の非特異的な相互作用をなくすためにPEGをはじめとする親水性あるいは酸性ポリマーで遺伝子-遺伝子キャリア複合体をステルス化し,そしてこの複合体をリガンド修飾するという手法が主にとられている。リガンドとしてタンパク質や糖鎖,ペプチドなど様々なものが利用され,最近ではモデルマウスにおいて有効な治療効果まで得られているものも少なくなく,今後の発展が期待される。一方,細胞内のシグナルレベルに応答して遺伝子発現をコントロールする技術もできあがってきている。この方法単独で標的細胞のみでの遺伝子発現を実現することが可能であるが,リガンドを使ったデリバリーシステムと組み合わせることにより,より精度の高い遺伝子ターゲティングが達成されると期待される。細胞外の認識と細胞内での機能コントロールという2つの柱が今後の遺伝子デリバリー技術をさらに発展させるだろう。
6. 膜融合能を利用した遺伝子導入法の開発:HVJ-Eベクター (西川智之・金田安史)

遺伝子を細胞に振りかけただけでは細胞内への遺伝子導入は不可能であるが,ウイルスは自身のゲノムを宿主となる細胞に効率よく挿入することが可能である。ウイルスは「膜融合」の過程を賢明に利用することによって細胞への「遺伝子導入」を行っている。ウイルスは融合タンパクによって標的となる細胞に結合し,融合タンパクの高次構造の変化によって膜同士の距離は狭まり,最終的には融合が完了する。この膜融合能を保持するHVJを利用し,遺伝子のみならず他の物質も導入可能な非ウイルスベクターであるHVJ-Eを概説する。
7. エンドソーム・エスケープ (新留琢郎)

遺伝子-遺伝子キャリア複合体のエンドソームから細胞質への移行効率向上は高効率な遺伝子発現のための重要なテーマである。エンドソームは内部が酸性化されるユニークなオルガネラであるため,この酸性化をトリガーとして,エンドソーム膜を破壊する分子設計が行われてきた。まず,インフルエンザウイルスの感染機構に学び,アニオン性ペプチド部分を使う手法が開発された。そして,アニオン性アミノ酸を塩基性アミノ酸に変換したものや,ヒスチジンに置き換え,そのプロトン化をきっかけに膜破壊能をもつペプチドやポリマーが合成された。また,ポリエチレンイミンはプロトンスポンジ効果により,エンドソームをバーストさせ,遺伝子を細胞質へ移行させる。今後,分子構造の改良や新たな概念の組み合わせにより,高効率で安全なエンドソームから細胞質への遺伝子デリバリーシステムの開発が期待される。
8. 細胞内トラフィック (秋田英万・原島秀吉)

効率的な遺伝子デリバリーベクターを開発するうえでは,細胞への取り込み,エンドソーム脱出,核移行,核内転写など,様々な細胞内素過程を最適化する必要がある。ウイルスは進化の過程で,これらのバリアを突破する非常に巧みな機構を1つの粒子の中にパッケージングしており,人工ベクターの開発を行ううえで,われわれはこれらの機構から多くを学ぶことができる。本稿では,細胞内動態制御へのアプローチに関して,これまで行われてきた試みを紹介するとともに,現時点における人工ベクターの問題点について,アデノウイルスとの比較を基に考察する。
9. 遺伝子修復 (紙谷浩之・原島秀吉)

生細胞内で標的とする遺伝子の配列を変換する方法(遺伝子修復法,遺伝子配列変換法)は,生物・医学研究や遺伝子治療の分野において重要になると思われる。われわれは安全性と効率の観点から,新規遺伝子修復用DNA断片として,一本鎖環状DNAから切り出した一本鎖DNA断片を考案した。この一本鎖DNA断片を用いた遺伝子修復効率は,従来のPCR産物を用いた場合より1桁以上高いものであった。また,遺伝子修復効率に影響するいくつかの因子を明らかにした。遺伝子修復法の分子機構を解明し,さらに修復効率の高いDNA断片を開発していきたい。
10. 人工核酸シャペロン:核酸のハイブリッド形成を促すバイオマテリアル (丸山 厚・新谷 彩)

核酸は,塩基配列特異的に二重らせん構造をもつハイブリッドを形成する。しかし,核酸のみでは不完全なハイブリッドが形成されることがある。核酸シャペロンは,核酸の正確なハイブリッド形成を介助するタンパク質として見出された。核酸シャペロン機能は様々なバイオテクノロジーへの応用が可能と考えられるが,天然の核酸シャペロンはタンパク質であるため,調製法や安定性・抗原性の面で問題がある。そこで,その機能を安定で使いやすい人工高分子材料で再現したカチオン性くし型共重合体について解説する。
11. デザイナブル核酸修飾 (杉本直己・中野修一・大道達雄)

核酸の機能を拡張するために修飾核酸が活用されはじめている。しかし,修飾核酸の分子設計は容易ではない。そこで,核酸の高次構造形成に関与する相互作用エネルギーを解明することで,構造や機能があらかじめ予測できる修飾核酸をデザイナブルに設計することができると期待される。細胞内で利用できる修飾核酸の設計には,天然型核酸の二重鎖構造の熱力学的安定性と,細胞内環境での核酸のハイブリダイゼーションの定量的な評価が特に重要である。この定量的な知見を基にして,高いスタッキング能力をもつ修飾核酸と,細胞膜透過性の修飾核酸を構築した実例について説明する。
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