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トランスレーショナルリサーチを支援する
先端生物医学研究・医療のための遺伝子導入テクノロジー
ウイルスを用いない遺伝子導入法の
材料,技術,方法論の新たな展開
編集: 田畑泰彦京都大学再生医科学研究所生体材料学分野教授

本書籍をご購入の場合は ……………… 1冊 本体 5,000円+税

要 旨
(第1章)

第1章 生物医学研究
1. 脂質 (川上 茂・橋田 充)

カチオン性脂質を用いて調製されるカチオン性リポソームとプラスミドDNAの静電的相互作用による複合体は,リポプレックスとも呼ばれ,遺伝子導入(トランスフェクション)するためのキャリアとして汎用される最も代表的な非ウイルスベクターの1つである。元来は,in vitro培養系でのトランスフェクションに用いられてきたが,適当な条件では in vivo トランスフェクションにも応用可能である。本稿では,in vitro ならびに in vivo トランスフェクションに用いられる様々なカチオン性リポソームについて論述する。
2.

刺激応答性をもつ脂質ベクター (高橋俊成・河野健司)

標的細胞に効率よく遺伝子を導入し,しかも安全なベクターの開発が望まれている。効率のよい遺伝子発現を実現するためには,ベクターが遺伝子をその最終目的地点である細胞核内までスムーズに誘導してやることが必要である。このためには,ベクターが,エンドソームからの脱出機能,細胞核への誘導機能,目的地点で遺伝子を放して転写可能な状態にする機能などの様々な機能を必要な場所で発現する能力をもつことが必要となる。このような機能発現のスイッチとして刺激応答性はたいへん有用である。ここでは,細胞内の環境変化や物理的な刺激に応答して機能発現する高機能ベクターのデザインについて解説する。

3. カチオン性ポリマー (橋本朋子・山岡哲二)

カチオン性ポリマーを用いた遺伝子導入において,細胞による取り込みや,細胞内トラフィックなどの効率化が精力的に検討されてきた。しかしながら,最終ステップであるポリプレックスの転写翻訳過程に関してはあまり検討が進んでいない。カチオン性高分子とDNAとの強い静電的相互作用は,転写因子によるDNAの認識に対して直接的な影響を与える。すなわち,高効率の非ウイルスキャリアを設計するにあたって,キャリア分子の化学的・物理化学的性質とポリプレックスの被転写翻訳効率との相関を解明し,さらに,その構造を最適化することが重要な戦略となる。
4.

デンドリマー (有馬英俊)

デンドリマーは単一のコア分子から規則的に分岐した複数の枝を有する樹木状の合成高分子の総称であり,特に末端がアミノ基であるポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーは,機能性核酸の細胞導入能に優れることが知られている。最近,デンドリマーの表面に糖や抗体などの機能性素子を修飾した高機能性デンドリマーの開発が活発に行われている。本稿では,遺伝子導入剤としての PAMAM デンドリマーおよび著者らによって開発されたデンドリマー/α-シクロデキストリン結合体(α-CDE結合体)およびその糖修飾体の最近の知見を中心に紹介する。

5. 多糖 (城 潤一郎・田畑泰彦)

現在,ウイルスベクターに代わる,ウイルスを用いない遺伝子導入法に関心が寄せられている。ウイルスを用いない遺伝子導入法の最大の欠点は,低い遺伝子導入・発現効率,細胞特異性である。この欠点を克服するために,数多くの遺伝子導入法が開発されている。本稿では,非ウイルス遺伝子キャリアの中から,多糖をベースとしたキャリアを紹介し,導入効率向上を念頭に入れたキャリアの設計,多糖の最大の特長である細胞特異性を狙ったキャリアの設計について概説する。
6. 遺伝子キャリアとしての高分子ミセル (大庭 誠・片岡一則)

性質の異なる連鎖を有するブロック共重合体は,一定の環境において熱力学的に最も安定な会合構造,高分子ミセル構造を自発的にとることが知られている。高い凝集力をもつ高分子ミセルには様々な物質を内包させることが可能であり,天然のアニオンである遺伝子DNAやRNAも内包可能な物質の1つである。これまで,薬物送達システム(drug delivery system : DDS)の観点から,高分子ミセルは有用なキャリアとして証明されてきた。本稿では,ウイルスの構造を模倣した高分子ミセル型遺伝子ベクターについて,最新の研究をふまえて紹介し,今後の可能性について展望する。
7. 高分子微粒子 (藤本啓二)

ここでは素材である微粒子の基礎を解説しながらベクターとの関連性について述べていく。初めに遺伝子導入に関する工学的アプローチを示し,遺伝子の微粒子への担持,局所における細胞内への遺伝子導入,体内循環中での分解や吸着の回避,細胞質への取り込み,および核内への移行について簡単に述べる。次にポリマー微粒子の作製方法について話をする。最初はモノマー溶液から重合反応によって作製する微粒子,次は分子間力を用いて作製する微粒子について述べる。さらに分解性微粒子を得るための溶媒除去法や相分離法について解説する。最後に,われわれが作製しているナノサイズの中空粒子を紹介する。
8. ナノゲル (今栄東洋子)

有限容積のテンプレート(鋳型)内で高分子を架橋すると,ミクロンやナノスケールのゲルが生成する。本稿では,ナノサイズに制御された親水性ゲルの生成,特性,そしてその利用を解説する。水に親和性のある官能基と刺激(例えば,温度,pH,添加物など)応答性の化学構造をもつゲルが合成される。水分散性ナノゲルは,そのサイズ効果や膨潤性などの性質を用いて,液体クロマトグラフィーの多孔性クロマトゲルの表面改質,粒子合成のテンプレート,光熱変換マトリクス,液体の膜透過制御,バイオデリバリーなどに利用されている。
9. 遺伝子導入におけるセラミック材料−リン酸カルシウムを中心に− (木村 剛・古薗 勉・岸田晶夫)

セラミック材料のうちリン酸カルシウムを用いた培養細胞への遺伝子導入法(リン酸カルシウム法)は,研究室レベルでの一般的な手法である。細胞傷害性が低く,操作も容易であるが,再現性や導入効率が低いため,その利用は限られる。これらの諸問題に対して詳細な検討がなされ,サイズや溶解性などの遺伝子導入効率への影響が明らかとなりつつある。最近では,ナノテクノロジーによる導入効率の改善や再生医療における遺伝子導入が注目されており,これらの進歩について概説する。
10. フラーレンC60の生体関連機能 (磯部寛之・中村栄一)

今から20年前に発見された[60]フラーレン(C60)は,国内で大量工業生産が開始され,様々な分野での材料として活躍しようとしている。本稿ではフラーレンの生体関連機能を俯瞰し,C60の遺伝子導入の基材としての可能性について紹介する。
11. ナノ磁性粒子による新たな遺伝子導入法 (野村祥太郎・望月勇輔・北 善紀・西尾広介・坂本 聡・加部泰明・半田 宏)

遺伝子工学の分野において,遺伝子の動物細胞内への導入法は最も重要な技術開発の1つであり,これまで分子生物学やバイオテクノロジーの発展に大きく貢献してきた。従来,大腸菌に代表される原核細胞と比べ,核をもつ真核細胞への遺伝子導入は非常に困難とされていた。しかし近年,真核細胞に対しても高い遺伝子導入効率を実現するリポフェクチン(Lipofectin)やリポフェクトアミン(Lipofectamine)などリポソーム系トランスフェクション試薬が開発されている。また,画期的な遺伝子導入法として組換えウイルスベクターも開発され,真核細胞に対する障壁は取り除かれたかのようにみえる。ところが,これらの方法でもすべての細胞に汎用的に使えるわけでなく,これらとは異なる新たな遺伝子導入法の開発が望まれていた。このようななか,全く異なる発想から生まれたナノ磁性粒子を用いるマグネトフェクション(Magnetofection)法が開発され,新たな遺伝子導入法として実用化されはじめている。本稿では,このマグネトフェクション法を簡単に紹介し,その特徴や将来的展望について解説する。
12. MEND (小暮健太朗・原島秀吉)

われわれは,多機能性の非ウイルス性遺伝子デリバリーシステムの構築に必要な新しい設計理念としてProgrammed Packagingを提唱した。さらに,この新しい設計理念に基づき,異なる遺伝子送達戦略を実現するための多機能性エンベロープ型ナノ構造体MEND(Tf/GALA-MENDとR8-MEND)を設計し,新規に開発した構築方法(SUV*fusion法と脂質膜水和法)によって機能性の異なるMENDを構築した。本稿では,これらMENDの構築方法の原理および遺伝子送達機能について紹介する。
13. 人工改変型ウイルスベクターの現状と今後の展開 (倉知慎之輔・中川晋作)

ウイルスベクターを用いた遺伝子導入法はウイルスの生活環を利用したものであるため,非ウイルスベクターと比較して極めて高い遺伝子導入・発現効率を有する一方で,治療を目的に生体へ適応した場合,ウイルスが本来もつ指向性により標的とする組織以外への移行ならびに遺伝子導入による副作用発現が問題となる。本稿では,アデノウイルスベクター(Adv)の外殻タンパク質を水溶性高分子で化学修飾することで,優れた遺伝子導入効率を保持したまま標的組織指向性をはじめとするdrug delivery system(DDS)機能を付与し,安全性に優れた次世代型ベクターを創製しようとするわれわれの試みを中心に概説する。
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