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シリーズ:最新遺伝医学研究と遺伝カウンセリング
シリーズ2
最新精神・神経遺伝医学研究
遺伝カウンセリング

編集: 戸田達史 (神戸大学大学院医学研究科 神経内科学分野/分子脳科学分野 教授)

本書籍をご購入の場合は ……………… 1冊 6,804円 (税込)

要 旨

(第3章〜第4章)

3章 精神神経遺伝カウンセリング各論
 1. 精神・神経難病疾患の遺伝カウンセリングに参加するカウンセラー
(神経内科専門医,臨床遺伝専門医,認定遺伝カウンセラー)の役割と考え方
  (
千代豪昭)

遺伝カウンセリングが対象とする遺伝性疾患には妊娠・出産に伴う領域,小児期の発達・障害に関するもの,外科的治療が必要なもの,家族性腫瘍,精神・神経疾患など臨床各科にまたがる広い領域がある。精神・神経疾患には進行性で治療が困難なものが多く,成人期の発症でクライエントの不安だけでなく,家族を巻き込んだ対応が必要になることも多い。綿密な家系資料の収集や遺伝子診断,医療・福祉資源との連携など「遺伝カウンセリング技術」を総動員しなくてはならないことも多い。このような精神・神経疾患の遺伝カウンセリングの領域で,遺伝カウンセリングの医療に占める役割をカウンセリングの進め方の中で具体的に紹介する。
 2. 精神・神経遺伝カウンセリングの実際
  (千代豪昭)


精神・神経疾患の遺伝カウンセリングは遺伝に関する共通した問題に加えて,①すでに自己確立し,家族など人間関係ができ上がった成人期発症のものが少なくないこと,②闘病は進行性で長期にわたり,治療が困難なものが少なくないこと,③人格の荒廃など人間性が損なわれるという本人の恐怖感,周囲の介護不安など心理的対応が必要になるなどの特徴をもつ。遺伝カウンセラーとしては,疾患に関する情報提供だけでなく,遺伝の仕組みや診断・治療など生殖・受療行動の調整や教育,心のケアや事故の防止,包括的なケアをめざした地域医療資源とのコーディネーションなど,カウンセラーが学んだあらゆる技術を総動員して対応しなくてはならない。事例をもとに,精神・神経疾患の遺伝カウンセリングについて紹介する。
 3. 出生前診断と発症前診断
  (近藤恵里・浦野真理・斎藤加代子


遺伝性神経・筋疾患は,出生前診断あるいは発症前診断の対象となることがある。希望者に対しては,チーム遺伝医療の体制のもとにガイドラインを遵守し,慎重な遺伝カウンセリングを行いながら実施の検討がなされる。遺伝カウンセリングの留意点は疾患によって異なるところがあり,また同じ疾患でもクライエントの背景や心理状況は様々であるため,症例ごとに寄り添って一緒に考え,クライエントの自己選択を支えていく必要がある。検査実施に際しては,結果が陽性であった場合の見通しが熟慮されていること,心理社会的なサポートを継続できる体制が整えられていることが大切である。
 4. 精神神経遺伝カウンセリングの実際(ケーススタディ)
  1) ハンチントン病
  (吉田邦広)


ハンチントン病は極めて浸透率の高い常染色体優性遺伝病であり,舞踏病,認知・精神機能障害を主症状とする。HTT 遺伝子内のCAG反復配列の過剰伸長が原因であるが,CAG反復数により発症年齢や臨床像はかなりばらつきがある。現時点では有効な予防法や治療法がなく,発症からの平均余命は15〜20年とされる。確定診断された患者はもとより,介護する家族や血縁者に対しての心理社会的支援が強く求められる。特にat riskである患者の子供に対する遺伝カウンセリングは,発症前遺伝子診断に象徴されるように遺伝医療の中では中核的課題の1つである。
  2) ミトコンドリア病
  (後藤雄一)

ミトコンドリア病の遺伝カウンセリングのポイントは,その臨床像の多様性に由来する診断の難しさと,遺伝様式の多様性,特に母系遺伝形式のわかりやすい説明に集約される。診断については,診療科の担当医,病理・生化学・遺伝子診断を行う施設と連携して,どこまで,どのような診断アプローチを行うかの判断を行うことが重要である。母系遺伝については,その機序と発症との関係をできるだけ明確に説明し,特にヘテロプラスミーで起きる病態では発症予測が困難であることを理解してもらうことが重要である。
  3) 筋強直性ジストロフィー
  (酒井規夫)

筋強直性ジストロフィーはDuchenne型筋ジストロフィーについで頻度の高い筋疾患であり,常染色体優性遺伝形式の疾患である。また表現促進現象を認め,特に母親からの遺伝で重症の先天型の罹患が多いことが遺伝カウンセリングにおいても重要なポイントとなる。臨床症状は筋症状のみならず,内分泌異常,白内障,糖尿病,前頭部禿頭,性腺機能障害,知的障害など多岐にわたる。また,発症前診断,出生前診断なども課題となる疾患であり,その対応は多面的で専門的なものである。
  4) 精神疾患の遺伝を患者家族とどう話し合うか
  (石塚佳奈子・尾崎紀夫)

精神疾患の診断やリスク評価において,詳細な家族歴の聴取と丁寧な診察は必要不可欠である。稀な症候群を除き,現時点で有用な臨床遺伝学的検査は存在しない。しかし,近い将来に臨床経過の予測や家族のリスク評価の一環として遺伝学的検査が組み込まれることは間違いない。臨床家は世界の流れを把握し,遺伝学の知識を身につける必要があるとともに,相談者の人生に及ぼす影響に配慮して,科学的知見に基づいた正確な情報提供と疾病説明に努めたい。
5. 認定遺伝カウンセラー制度と教育トレーニング
  (山内泰子)

認定遺伝カウンセラー制度はわが国における遺伝カウンセリング担当者(非医師)を養成するものである。専門教育は認定遺伝カウンセラー養成課程設置の大学院で行われる。実践を支える基本的な知識(人類遺伝学・遺伝医学,カウンセリング理論と技術,倫理や社会)と態度を身につけ,どの領域でも対応できる基盤を修得する。認定試験に合格・資格取得後も継続的な研修が課せられている。就職後の現場に応じた最新の知識およびトレーニングを積み,医師などの関連識者との協同が肝要で,広く関わる領域の専門家の協力が不可欠である。

本論文は,遺伝子医学MOOK 別冊/ シリーズ:最新遺伝医学研究と遺伝カウンセリング 「シリーズ1 最新遺伝性腫瘍・家族性腫瘍研究と遺伝カウンセリング」 (300 〜 309 頁)より転載しています。
第4章 倫理的・法的・社会的問題
1. 患者登録と情報
  (木村 円)

希少疾患の国際的な臨床開発において患者登録は重要な役割を果たしている。Remudyは,神経筋疾患の臨床研究基盤の構築を推進する国際的組織TREAT-NMD allianceの重要なメンバーとして,わが国におけるナショナルレジストリーを運用してきた。治験・臨床研究の推進,登録者と最新の医療・臨床研究に関する情報共有に貢献している。対象疾患の拡大とともに,臨床開発に資する自然歴研究,市販後安全性調査データベースへの展開をめざしている。登録情報を厳密に管理するシステムは,ICTテクノロジーの進展と医療ビッグデータ時代の倫理的課題や法改正に対応し,さらなる進化が望まれる。
2. ハンチントン病と患者会
  (
三原寛子)

ハンチントン病は遺伝性疾患のため家族間でも病気について話し合うことが難しい。特にat-risk者の心理的苦悩は大きい。そこで当会は当事者たちが悩みを打ち明け互いに励まし合う場として機能してきた。さらに医療福祉分野の専門家からアドバイスを受け,日本語版ハンチントン病統一評価尺度の策定や臨床試験に協力し,新薬承認という成果を享受できた。一方,患者会との関わり方は当事者と医療関係者とで異なる。双方の立場を経験した自身の経験から患者会と医療関係者との誤解や過剰な期待を避け,良好な関係性を保つための相互理解について提案したい。
3. 難病支援制度
  (渡辺保裕・原田孝弘・佐々木貴史・中島健二)

難病は疾患自体が希少で,治療法が十分に確立されていない。神経難病患者は医療保険制度または後期高齢者医療制度の他に「難病法」,「介護保険法」,「障害者総合支援法」に関わる社会保障制度・サービスを利用する機会が多い。在宅,施設,入院での生活を送る際に,それ以外にも種々の医療・福祉制度を利用することが可能である。難病の医療・福祉関係者には,これらの支援制度を熟知し,職種間で協力しあうことが望まれる。本稿では遺伝相談,就労支援,災害支援を含めて難病支援制度を概説する。
4. 遺伝子解析を伴う家族性腫瘍の倫理的諸問題
  (武藤香織)

本稿では,精神・神経遺伝医学研究の適切な実施に必要な倫理的諸問題について解説する。本邦における2つの研究倫理指針について紹介したうえで,研究を実施するうえでの原則,倫理審査委員会の役割,治療と研究との誤解,インフォームドコンセント(アセント)の意義,遺伝情報の返却,個人情報保護法改正などについて解説する。
5. 社会とともに進めるゲノム医学研究のあり方
−ゲノムデータの共有と研究への患者参加を中心に
  (加藤和人)

変化の激しいゲノム医学研究を,社会の中で信頼を得て発展させていくためには,様々な点に対する配慮が必要である。政府倫理指針を遵守し,適切な手続きに基づいて研究を進めることに加えて,国際的なデータ共有の動向や患者参加型の研究の仕組みづくりなど,これまであまり注目されていない活動に目を向けることも必要になる。本稿では,ゲノム医学の今後の発展に必要となる新しい動きを紹介する。
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