第3章 新しい分子イメージングの活用 |
1.新しい治療法評価への分子イメージングの応用
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1) |
遺伝子治療・細胞治療の分子イメージング (犬伏正幸・金 永男)
近年,ゲノム研究と幹細胞研究が著しい発展を遂げ,遺伝子治療と細胞治療という新しい概念の治療法が臨床医療へと持ち込まれつつある。その結果,これまでにはなかった生体情報を評価する必要性が新たに生じてきた。すなわち,遺伝子治療においては治療遺伝子の導入と発現を評価することであり,…… |
2) |
放射線治療の分子イメージング (板坂 聡・原田 浩・近藤科江・平岡真寛)
放射線治療抵抗性の重要な要因である腫瘍内低酸素の克服は長年の課題であったが,低酸素応答因子hypoxia
inducible factor -1(HIF-1)の発見によって新たな展開を示している。われわれはHIF-1活性化の経路を利用した低酸素イメージングにてマウス実験腫瘍内の低酸素領域の治療に伴う変化を画像化しており,今後の臨床応用に向け研究を継続している。…… |
3) |
再生誘導治療(再生医療)の分子イメージング (城 潤一郎・田畑泰彦)
現在,細胞移植や生体の自然治癒力を高める医工学技術(生体組織工学)による再生誘導治療が試みられている。この治療のさらなる発展のためには,移植細胞の生体内運命や再生誘導過程および再生修復された組織と臓器の生物機能を評価する技術・方法論の研究開発が必要不可欠である。…… |
2.医薬品開発への分子イメージングの応用
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1) |
創薬研究への応用 (渡辺恭良)
生体分子イメージングの手法を用いて,これまでの分子論的生命科学をシステムへと展開することが可能であり,病態の分子医学的把握とその情報を有効に用いた薬効評価,また従来の血中動態だけでない標的細胞・分子への薬物動態を捉えることができる。特に,動物を対象として創薬基礎研究を行っていると離れがちな「ヒトに対しての創薬」を行っていくために欠くことのできない方法である。…… |
2) |
マイクロドーズ臨床試験 (池田敏彦)
医薬品開発過程での障害の1つは動物種差であり,実験動物で確認された薬効が臨床試験で認められず,あるいは予期せぬ毒性が発現して開発が失敗する事例が多い。それゆえ,開発候補化合物にはヒトで良好な薬物動態や薬効を示すと想定される化合物を選択すべきであると考えられてきている。……
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3) |
動物PETによる薬理作用・治療効果の前臨床評価 (塚田秀夫)
多くの時間と開発費用を要する医薬品開発の効率化のため,PETの特性を利用する試みが国内においてもここ数年広がりを見せてきた。開発候補化合物をポジトロン核種で標識し,生体に投与して動態・分布・代謝を観察するだけでなく,疾患関連の生体内分子ターゲットに共通に結合するPETプローブとの相互作用を計測して,…… |
4) |
薬物トランスポーターのイメージング (楠原洋之)
薬物トランスポーターは医薬品の細胞膜透過を制御する膜タンパクであり,医薬品の組織分布や,胆汁・尿中への排泄,消化管吸収を制御している。薬物間相互作用のメカニズム解析やトランスポーター遺伝子の多型による機能変動の評価,またin vitro 実験系からの体内動態予測法を構築するためには,個体レベルでのトランスポーター機能の評価が必要不可欠であり,…… |