第5章 DNAチップ/マイクロアレイ創薬研究応用への実際 |
1.創薬研究応用
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1) |
ファーマコゲノミクス(総論) (前田和哉・杉山雄一)
近年,薬物の効果・副作用の個人差を説明しうる一要因である遺伝的要因の対象となる遺伝子および変異の発見が急ピッチに進むとともに,臨床での処方設計や創薬の方法論にも大きな考え方の変化が訪れている。また,DNAチップなど一度に多検体測定可能な技術開発は,ゲノムワイドに網羅的な遺伝子の発現プロファイルや変異解析を可能とし,……
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2) |
概日リズムと創薬標的遺伝子探索 (橋本誠一)
生体において主要な機能を担っている多くの遺伝子の発現レベルが日内変動している。したがって,DNAマイクロアレイを用いて臓器・組織の包括的遺伝子発現解析をする場合,生体リズムについて常に留意しなければならない。創薬研究において,疾患に伴い発現レベルが変動する遺伝子や薬物刺激に応答して発現レベルが変動する遺伝子を探索しようとする場合,……
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3) |
抗腫瘍性低分子化合物の転写プロファイリングと生物パスウェイ解析への応用 (大和隆志)
筆者らは,種々の抗腫瘍性低分子化合物が癌細胞に及ぼす遺伝子発現変化のパターンをマイクロアレイ法により解析し,それを各化合物固有のフィンガープリントとして化学構造と対応させて分類のうえ,データベース化する取り組みを進めている。この構造-転写プロファイル相関の検討は,創薬研究においてケミストリーとゲノミクスを有機的に融合させる……
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2.トキシコゲノミクス |
1) |
Percellome Project
(菅野 純・北嶋 聡・相ア健一・五十嵐勝秀・中津則之・高木篤也・種村健太郎・小川幸男・児玉幸夫・関田清司)
毒性学(トキシコロジー)は身の回りの物質の毒性(有毒性)を予測し,それらの曝露による被害を未然に防ぐ研究分野である。その精度向上を目的にトキシコゲノミクス研究を開始した。マイクロアレイから細胞1個あたりのmRNAコピー数を得るPercellome法を開発し,遺伝子発現変動を投与量および時間の関数として三次元曲面(surface)データとして可視化し,……
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2) |
動物を用いたアレイ実験の実際 (中山光二・関島 勝)
遺伝子発現変動から毒性/副作用を測定・予測しようという分子毒性学(トキシコゲノミクス)の研究が取り組まれており,毒性のメカニズムを解析したり,毒性を予測したりする手法として有効な手段であることが示されている。しかしながら,現在でも培養細胞と動物個体から得られるデータのブリッジングができておらず,……
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3) |
医薬品安全性評価とヒトにおける副作用予測 (小野 敦)
網羅的遺伝子発現の毒性評価への応用(トキシコゲノミクス)は,従来の毒性試験では予測が困難であった毒性を短期間・高精度に予測可能にすると期待されている。しかし現時点では,ほとんどの遺伝子について,その変動と毒性表現系との関連は明らかにはなっていないため,バイオマーカーの確立が必須である。……
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