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内容目次 |
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●序文 (川上浩司) |
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●第1章 臨床応用,医薬品やバイオ医薬研究開発の総論 |
1. |
臨床研究と医薬品開発
(川上浩司) |
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要旨なし |
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2. |
医薬品開発の全貌と国際動向
(松森浩士) |
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医薬品の新薬として上市にいたる確率は極めて低く,長い年月と多くの研究開発費用を有する。特に研究開発費用は世界的に増加傾向がみられるが,その一方で,研究開発費用の増加に見合った承認取得品目数が得られておらず,研究開発生産性の向上が製薬会社にとっての課題である。臨床開発費用を軽減させ,かつドラッグ・ラグ解消が期待される方法の1つが国際臨床試験への参画である。医薬品開発の規制の国際化が進んだことで国際共同治験の実施エリアは日米欧のみならず全世界に拡大している。わが国も国際共同治験に参加しやすい環境整備が急務であり,数多くの国際共同治験を実施または参画できる環境作りに国を挙げて取り組む必要がある。
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3. |
バイオロジクスの開発における品質管理と規制
(大串賢一・鹿野真弓) |
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古くはワクチンやトキソイドなどに始まり,細胞・組織工学などの先端技術を利用した医薬品・医療機器などまでも含む生物由来原材料に由来する医薬品・医療機器,いわゆる「バイオロジクス」は,その有効性および安全性を担保するために慎重な品質管理が必要であり,関連する規制も随時整備・更新されている。
本稿では,バイオロジクスの品質管理に係る一般的考え方や留意点を中心に,薬事法下において求められるバイオロジクスの上市に必要な対応や規制なども交えて概説する。
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4. |
非臨床試験を概括する
(漆原尚巳・樋之津史郎・川上浩司) |
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ヒトを対象とした臨床試験を実施する際には,被験者の安全の確保が重要である。そのため,医薬品の候補物質に対して期待される薬効・薬理作用を明らかにするだけでなく,人体において薬効を得るために重大な危険がなく投与できる用量範囲を推定するための情報を,臨床試験を開始する以前に集めておく必要がある。非臨床試験では,各種細胞系やモデル動物に医薬品の候補物質を作用させ,得られたデータから,①人体において目的とする効果を得るために適した生体内での分布をとるかどうかの確認,②他の非臨床試験で用いる用量や,臨床試験における初回投与量の決定,③人体において目的としない作用や有害な作用の現れる可能性を推定するために必要な情報を得ることが目的となる。
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5. |
医薬品開発における臨床試験と生物統計
(大橋靖雄) |
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医薬品・医療機器など,医療技術を評価する臨床試験方法論の重要な要素が統計である。統計学の原理としては,検証試験に用いられる検定の基礎を与える古典的な頻度論と,主に意思決定のために用いられるベイズ統計学が存在し,後者による適応的方法も活用されつつある。臨床試験は主に安全性の確認のための第Ⅰ相,効果の予備的検討と用法・用量の決定のための第Ⅱ相,標準治療(ないしプラセボ)とのランダム化比較により検証を行う第Ⅲ相に分類される。これらを概説し,臨床試験に関する法的ならびに倫理上の規制,登録制度と論文出版のためのガイドラインについて解説する。
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6. |
バイオベンチャーの取り組みと動向
(塚本芳昭) |
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今日,日米欧の主要製薬企業の開発中医薬品の多くがバイオベンチャー由来になるなど,イノベーションにおけるバイオベンチャーの役割が増大している。わが国のバイオベンチャーは質・量ともに米国・欧州に及ばないが,優れたものもあり,近年国内外の製薬企業との提携が増大しつつある。一方,バイオベンチャーを取り巻く環境は厳しい。今後,資金調達環境・治験環境の整備,オープンイノベーション促進のためのインフラ整備などによりバイオベンチャー,バイオ関連産業が発展し活力ある日本の礎が築かれることを期待する。
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7. |
バイオベンチャー支援の意義と開発の隘路
(小澤健夫) |
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わが国のライフサイエンス分野の研究力は国際レベルであり,一流の学術雑誌への論文掲載数もその現実を裏づけている。しかし,創薬活動の開発力の指標の1つともいえるNew England Journal of MedicineやLancetといった臨床研究面での一流学術雑誌への論文掲載数は,残念ながらそうではない。わが国の革新的な医療技術の早期開発力の脆弱さを露呈している。
今後,先端医療技術開発における迅速かつ的確な真の開発力強化のためのバイオベンチャー支援の重要性はますます高まるであろう。
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8. |
臨床研究を担うもう1つの車輪
(中村文明・福原俊一) |
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わが国でも臨床研究の重要性が認識されつつあり,エビデンスに対する期待は医療内部からのもののみならず,社会から医療に対する要請でもあると考えられる。臨床研究と臨床試験は同義とされてしまうことが多いが,エビデンスを患者の手元に届けるには臨床試験では不十分であり,より広い臨床研究が必要である。なかでもアウトカム研究,医療の質研究は,臨床試験と並び臨床研究の三本柱であると考えられる。社会の医療に対するニーズを満たしていくためには臨床試験の推進のみでなく,より広い臨床研究が必要である。
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●第2章 臨床応用の取り組みにかかる事例 |
1. |
アカデミアにおけるTR支援体制の必要性
(小池 恒・今井 靖・永井良三) |
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新たな疾患の予防や治療,診断技術の開発をテーマとして研究を行っている医学研究者に対して,医学研究におけるトランスレーショナルリサーチの実践に必要な情報や考え方を紹介し,トランスレーショナルリサーチ推進のための支援組織のあり方を提案する。特に,アカデミアで多く行われる先端生命科学領域(遺伝子治療や再生医療など)について,臨床研究を倫理的・科学的に質の高い臨床研究として行うための考え方についても述べてみたい。
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2. |
循環器分野の臨床応用研究 : J-WIND,ABC&PPAR研究
(朝倉正紀・金 智隆・浅沼博司・北風政史) |
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急性心筋梗塞の補助療法として,hANP およびニコランジルの有効性を多施設無作為化プラセボ対照比較臨床試験(J-WIND 試験)にて検討した。かかる試験において,hANP 投与による有効性が明らかにされた。J-WIND 試験の経験より,①臨床試験計画書の重要性,②試験開始までの期間短縮,③データマネジメントの必要性,④中央事務局の設置,⑤試験解析の仕組み,⑥J-WIND 試験経験からの課題などについて本稿において概説する。また,現在進行中のPPAR 試験およびABC 試験の概要も述べる。
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3. |
糖尿病分野の臨床応用研究
(前川 聡・小畑利之・柏木厚典) |
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インスリン分泌機構やインスリン抵抗性の発症機構など基礎研究が精力的に行われている。本稿では,糖尿病発症の遺伝的背景の解明や高リスク群の同定などのオーダーメイド医療実現への試み,血糖コントロール評価のため新規血中マーカーの有効性の検討,膵β細胞の定量化への試みや新しい作用機序に基づく糖尿病薬の開発,さらには再生医療を用いた膵島移植や肥満症手術など新たな治療法について概説する。
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4. |
癌遺伝子治療 : 悪性腫瘍に対する治療用・診断用ウイルス製剤の臨床開発
(藤原俊義・浦田泰生) |
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ウイルスは本来ヒトの細胞に感染・増殖し,その細胞を様々な機序により破壊する。遺伝子工学技術によりこの増殖機能に選択性を付加し,ウイルスを癌細胞のみを傷害する治療用医薬品として用いることが可能となる。また,蛍光遺伝子などを搭載することで,癌細胞を特異的に標識する診断用医薬品としても応用可能である。本稿では,従来の癌治療とは異なる新たな戦略として,大学発バイオベンチャーによって開発されているこれらの新たなウイルス製剤の癌診断・治療への臨床応用の可能性を概説する。
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5. |
癌分子標的療法 : 抗癌分子標的ハイブリッドペプチド
(堀部智久・河野雅之・一丸大樹・川上浩司) |
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近年,様々な分子標的抗癌剤が開発されており,癌治療に対する期待は大きなものがあ
る。しかしながら,多くの分子標的抗癌剤はチロシンキナーゼを阻害して癌の増殖を抑制する(tyrosine kinase inhibitor:TKI)ために,シグナル分子が変異した癌では治療抵抗性・耐性がみられることが明らかになっている。本稿では,そのような治療抵抗性の難治性癌に対する新規治療法を確立するための新たな分子標的抗癌剤の基盤研究,ならびに今後の取り組みについて筆者らの研究室の試みと合わせて紹介,概説する。
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6. |
癌ワクチン療法 : 最後の谷(ランダム化比較試験)の克服へ
(伊東恭悟・笹田哲朗) |
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癌ワクチン臨床試験では,従来では認められなかった優れた臨床効果が期待されるようになった。しかし,これまでのランダム化比較試験の大多数がコントロール群に比べて有意な臨床効果を得ることに失敗し,科学的混乱および企業撤退を招いている。これらより,癌ワクチン療法は原点に立ち戻っての医学的検証が求められているといえる。アジュバント開発,バイオマーカー創出,ゲノムレベル解析とともに,癌免疫の多様性および癌細胞側の逃避現象の理解を深めて,それらを実際の臨床試験プロトコルに反映させることが肝要であろう。
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7. |
癌ワクチン療法 : 新規抗原デリバリーシステムCHP(疎水化多糖)を用いた多価性癌タンパク質ワクチンの開発
(珠玖 洋・原田直純) |
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癌と免疫の関わりについての理解の進展を背景として近年,癌治療のための癌ワクチンの開発が世界的に進んでいる。われわれは,癌に対する獲得免疫が成立するメカニズムにおけるキラーT 細胞,ヘルパーT 細胞および抗原提示細胞の重要性に注目して設計した新しい多価性癌ワクチン「CHP 癌タンパク質ワクチン」の開発事業を進めている。本ワクチンはキラーT 細胞とヘルパーT 細胞の同時活性化を達成するために全長の抗原タンパク質を採用し,抗原タンパク質の抗原提示細胞への効率的な送達とクロスプレゼンテーションを促す新規抗原デリバリーシステムCHP を取り入れている点を特徴とする。本ワクチンは臨床・非臨床・GMP 製造の各側面におけるアカデミアと企業の協奏的な努力の末に現在,国内治験の途上にある。
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8. |
泌尿器領域の臨床応用研究 : BCG細胞壁骨格成分(BCG-CWS)搭載多機能性ナノ構造体による膀胱癌ワクチンの開発
(宮崎 淳・河合弘二・常楽 晃・赤座英之・原島秀吉・矢野郁也) |
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表在性膀胱癌の治療にはMycobacterium bovis bacillus Calmette-Guerin(BCG)を使用することが一般的であるが,より副作用のない治療が望まれている。膀胱癌に対してBCG が治療効果を発揮するには,BCG が細胞に侵入することが有効と考えられている。そこで,熱処理されたBCG(BCG-CW)をリポソームに組み込み,侵入のベクターとして調製し,マウスにおける膀胱癌細胞の皮下接種モデルでの有効性を検討したところ,発癌を有意に抑制することに成功した。また,ラットBBN 発癌誘発モデルにおいて,膀胱内注入および静脈内注入の両方で発癌を抑制することができた。このことからも,生菌とは異なり,安全に全身投与ができると考えられ,全身性の免疫療法となりうる可能性を示し,将来的には遠隔転移治療への応用を示している。
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9. |
新規癌抑制遺伝子REIC/Dkk-3 による遺伝子治療の臨床開発
(公文裕巳) |
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岡山大学オリジナルのREIC 遺伝子は,「癌細胞選択的アポトーシス」と「抗癌免疫の活性化」を同時に実現する画期的癌治療遺伝子である。癌抑制遺伝子としてREIC の発現が抑制されている多種類の癌治療へ幅広く適用可能であり,抗癌作用の選択性と相乗効果のメカニズムが小胞体ストレス応答の差に由来する全く新しい治療概念を提唱するものである。前立腺癌に対する遺伝子医薬の開発を中心に,その戦略と現状を解説する。
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10. |
血管遺伝子治療
(牧野寛史・森下竜一) |
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大学で生まれたシーズの実用化にはバイオベンチャーによる橋渡しが重要である。同時に大学での初期臨床研究を治験と同程度の質で行っておくことも早期実用化のために必要な要素である。重症の血管疾患に対する新たな治療として,われわれはHGF 遺伝子を用いた遺伝子治療を開発した。大阪大学においてGMP,GCP 準拠でPhase Ⅰ/Ⅱa 臨床研究を実施した。さらに遺伝子治療薬の実用化をめざしてバイオベンチャーを設立し,それにより国内でPhase Ⅲ治験,米国でPhase Ⅱ治験を実施できた。HGF 遺伝子治療薬は一定の効果を認め,現在承認申請中である。
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11. |
眼科領域の臨床応用研究
(窪田 良・小口しのぶ) |
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加齢黄斑変性症は米国において失明原因のトップの疾患である。同疾患は,ドライ型とウェット型に分けられる。現在のところ製品化されているのはウェット型に対する眼球内注射剤などの注射剤の治療薬のみであり,患者の9割を占めるドライ型に対する治療薬として承認を受けたものはまだない。2007年のVisiongain レポート『The AMD Report(2007-2017)』の報告によると,患者数は全世界で2900万人以上と推定されている。今後人口高齢化に伴い世界的に罹患率が増えることが予測されることから,有効な治療薬の開発が望まれている。アキュセラ社(米国)は,ドライ型の治療薬として原因物質の蓄積を防ぐ経口投与可能な低分子化合物を見出し,臨床開発を行っている。
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12. |
再生医療(眼科)
(中村隆宏・外園千恵・木下 茂) |
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近年の再生医療技術の進歩により,角膜再生医療が現実のものになってきた。増殖・分化能の高い幹細胞などを利用することによって,角膜組織を生体外で適切に再生し移植しようとする培養上皮細胞シート移植による角膜上皮再生医療の臨床応用研究が行われている。さらに,角膜再生医療の実用化のためには安全性・倫理面が担保された移植用材料の提供が必要不可欠であり,厚生省の臨床研究指針に則ったGMP 準拠の細胞治療施設を整備し,適切な品質管理体制のもとで移植用培養上皮細胞シートの作製を開始した。
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再生医療(循環器) - 細胞シートによる心筋症治療
(澤 芳樹) |
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近年,重症心不全患者に対する心機能回復戦略として,自己細胞による臨床応用が開始されている。われわれは,温度応答性培養皿を用いた細胞シート工学の技術により,細胞間接合を保持した細胞シート作製技術を開発し,心筋再生治療の臨床研究を開始した。さらに,iPS 細胞を用いた心血管再生治療も期待され,越えなくてはならないハードルがたくさん存在するが,iPS 細胞の樹立をきっかけとして,世界中で幹細胞研究が活性化され,iPS 細胞を用いた心血管再生医療が現実的なものになると思われる。近い将来,自己細胞移植や組織工学的技術を駆使することにより,心臓移植や人工心臓治療とともに再生治療によって重症心不全治療体系が確立されるであろう。
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14. |
再生医療(脳梗塞)
(本望 修) |
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脳梗塞亜急性期の患者に,自己の骨髄幹細胞を静脈内に投与することで,神経症状の改善が見込まれることが期待されている。骨髄幹細胞の治療メカニズムを考慮すると,脳梗塞以外の脳神経疾患への適応拡大の可能性が示唆され,今後,更なる発展を遂げることが予想される。
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再生医療(組織工学) - バイオマテリアル技術からみた再生医療の臨床研究と応用
(田畑泰彦) |
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イモリのしっぽが再生する現象をヒトで誘導し,治療に役立てようとする試みが再生医療である。その基本アイデアは,細胞の増殖・分化能力を高め,自己の自然治癒力を介して生体組織を再生修復させることである(再生誘導治療)。この治療法を実現させる2つのアプローチが細胞移植と組織工学である。いずれのアプローチにおいても,バイオマテリアル技術は重要な役割を果たしている。現在,バイオマテリアル足場や細胞増殖因子のドラッグデリバリーシステム(DDS)技術によって,様々な生体組織の再生誘導治療の臨床研究が進められている。再生医療の最終ゴールはもちろん治療であるが,これに加えて,治療を科学的に支え新しい治療概念を提唱する生物医学研究や創薬研究も大切な再生医療応用である。本稿では,バイオマテリアル技術からみた再生医療の実現に必要不可欠な応用について考えてみたい。
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16. |
再生医療(組織工学) - 細胞シート工学による再生医療
(大和雅之) |
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温度に応じて細胞接着性を大きく変化させる温度応答性培養表面を用いることで,トリプシンなどのタンパク質分解酵素を必要とすることなく,細胞をシート状に回収できる。細胞シート移植は,高度な分化機能を有した細胞集団を生体組織へ効率よく導入できる新規技術であり,これまでに複数の組織でその臨床応用に成功している。ここでは,再生医療の歴史を概観するとともに,細胞シートを用いたヒト臨床の現状を紹介する。
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17. |
認知症領域の大規模臨床研究 : Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative
(岩坪 威) |
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アルツハイマー病(AD)の病因的過程に作用するdisease-modifying therapy を臨床開発するためには,バイオマーカーを用いたAD の客観評価法の確立が重要である。脳内のβアミロイドをPET スキャンで検出する「アミロイドイメージング」,MRI による脳容積評価や体液生化学マーカーを指標としてAD の進行過程のモニター・発症予測法を確定しようとする大規模臨床観察研究としてAD neuroimaging initiative(ADNI)が米国でスタートした。本邦でもAD の前駆状態である軽度認知障害(MCI)を中心に全600名の被験者を追跡するJ-ADNI が開始されている。米国ならびにJ-ADNI プロジェクトの成果と未来について考察する。
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18. |
認知症・神経領域の臨床応用研究 : パーキンソン病の遺伝子治療
(村松慎一) |
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治療用遺伝子を神経細胞に効率よく導入し長期間発現可能なアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを応用して,パーキンソン病(PD)に対する遺伝子治療を開発してきた。モデル動物を使用した前臨床試験の好成績を踏まえて臨床研究を実施した。第一段階として6人のPD 患者の被殻に定位脳手術により芳香族アミノ酸脱炭酸酵素遺伝子を発現するAAV ベクターを注入し,期待どおりの成績が得られている。米国では,神経栄養因子のneurturin やグルタミン酸脱炭酸酵素の遺伝子を導入する治療も開始されており,今後の発展が期待される。
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19. |
医療機器の臨床応用研究(脳神経外科) - 医師主導治験の経験
(伊関 洋・村垣善浩・丸山隆志・田中雅彦・生田聡子・鈴木孝司・吉光喜太郎・秋元治朗)
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新規医療機器を使用した治療技術の開発および普及(医療現場への導入)には,臨床研究・治験を経た薬事承認が必須である。新規医療機器の開発と同時に不可欠なのは,その評価法の開発である。開発した新規医療機器の性能・安全性などについては,開発者自身が自ら評価方法を作っていかなければならない宿命にある。アイデアの段階から,薬事承認申請を考え,非臨床データパッケージ,臨床研究デザイン・プロトコルを考慮した新規医療機器の研究開発が必須である。そのためにも,レギュラトリーサイエンスを理解し,推進する環境整備が必須である。
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20. |
医療機器の臨床応用研究(循環器) - 先端的医療機器の開発と製品化
(妙中義之) |
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医療機器開発には,臨床現場や患者が求める明確なニーズ,将来の医療に貢献する重要なアイデア,医工・産学連携,複数技術の融合,製品化への連続的プロセス,規制対応,技術をもつ企業が医療機器分野に入るための世論作りなどが重要である。開発に参加した例としての先端技術を応用した人工心臓やその周辺機器,人工肺の製品化プロセスでの,問題点,外部企業や省庁との連携などについての経験に関して概説した。
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21. |
医療機器の臨床応用研究(乳腺) - ICG 蛍光測定法の乳癌センチネルリンパ節生検への応用
(杉江知治・藤澤憲良) |
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早期乳癌に対するセンチネルリンパ節生検では主に色素法,ラジオアイソトープ法が用いられるが,近年インドシアニングリーン(ICG)を色素として用いる蛍光測定法が注目されている。ICG は優れた蛍光物質で,注入後,蛍光画像観察装置で観察することによって経時的にリンパ流を確認でき,皮下リンパ管や腋窩リンパ節の同定も容易となる。
われわれの施設でのICG 蛍光法と色素の併用法によるセンチネルリンパ節の同定率は100%と良好な成績であり,ラジオアイソトープ法と色素の併用法と遜色のない結果といえる。
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●索引 |