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内容目次 |
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1. |
アカデミアにおける医薬品開発の戦略
(川上浩司) |
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医薬品の開発にあたっては,製造にかかるGMP,非臨床試験にかかるGLP,そしてGCP上での臨床試験の実施を理解し,また開発の主体をどのようにするかという戦略も必要となる。
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2. |
知っておきたい臨床応用への制度:薬事法上での開発と治験
(廣居伸蔵) |
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日本の薬事法は,日本国における医薬品等に関する運用などを定めた法律である。治験とは医薬品(または医療機器)の製造販売の承認申請をするために行われる臨床試験のことを指す。日本の治験は薬事法の規制のもとで行われる。
GCPは,臨床試験が 「倫理的」 な配慮のもとに 「科学的」 に実施されることを目的として定められた法律である。
2003年6月の薬事法改正により,これまでの企業が行う治験に加えて,医師主導治験が制度化された。医師主導治験とは,医師あるいは医療機関主導で企画され実施される治験である。
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3. |
知っておきたい臨床応用への制度:高度医療と先進医療
(村山敏典・横出正之) |
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臨床応用研究の最終目標の1つは,先端医療技術の安全性と有効性を科学的に評価して,健康保険が使える標準医療として患者のもとに迅速に届けることだが,臨床試験を行う際にも,試験中の医療費の取り扱いや試験費用の負担区分に配慮する必要がある。わが国ではいわゆる混合診療が禁止されており,研究的な医療と一般医療を同時に行う場合には,国が承認する 「治験」 または 「先進医療」 という制度のもとで実施しないかぎり,健康保険が併用できない。本稿では,先進医療とその類型である高度医療評価制度について説明する。
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4. |
臨床応用にかかる薬事相談制度,試験薬の準備とGMP
(伊藤達也) |
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医薬品や医療機器が患者に使用されるためには,国からのお墨付き(承認)が必要である。この承認を得るためにはGCPに則った 「治験」 を実施し,厳しい審査を越えなくてはならない。医薬品医療機器総合機構(PMDA)では,その治験や承認申請に関する薬事相談制度が設けられている。また,治験を実施する前には試験物の準備が必要であり,ヒトを対象としたものであることから十分な品質と安全性が担保されたものでなければならない。試験物の製造には国が定めた基準があり,それをGMPと呼ぶ。本稿では治験にかかるルールの概要について触れたい。
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5. |
もしもアメリカで臨床開発を行うならば:IND制度の利用
(川上浩司) |
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日本のアカデミア発の医薬品候補物質(シーズ)であっても,米国においてIND申請を行って臨床試験を実施するという方法も考えられる。本稿では,IND申請と,それに先立つPre-IND制度の利用について解説する。
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6. |
臨床応用研究におけるプロジェクトマネジメント
(伊藤達也) |
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医薬品や医療機器などを用いて行う臨床応用研究(以下,臨床研究)は,ヒトを対象にした研究であることから,守るべき指針や準備必要項目などが存在している。医師や研究者がすべてを理解し,少人数で行うことは至難の業である。現在,臨床研究は品質が問われており,1つのプロジェクトと捉え,多くのメンバーによるチーム編成にて進めるものに変わりつつある。そのプロジェクトには取りまとめ役が必要であり,それをプロジェクトマネジメントと呼ぶ。プロジェクトマネジメントとは,時間と資金とマンパワーのバランスをとって,プロジェクトが一番早くゴールに辿り着くためにあらゆるサポートをすることにある。
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7. |
非臨床試験の組み立て方
(一丸大樹) |
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研究者が多大な時間と労力をかけて見出した医薬品候補物質が医薬品として認可されるには臨床試験は避けて通ることのできないプロセスであるが,第Ⅰ相臨床試験から第Ⅲ相臨床試験まで,それぞれの開発ステージの試験を開始するために最低限検討しておくべき非臨床試験がある。それぞれの開発ステージにおける被験者の安全上のリスクを最小にとどめ,かつ臨床試験の目的を達成するためには各種ガイドラインを活用するとともに,対象疾患,既存の治療法,候補物質の特性を熟慮したうえで効率の良い非臨床試験実施計画を練り上げることが重要である。
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8. |
GLPと信頼性保証
(佐々木まどか) |
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薬事法に則った医薬品開発において,実験動物を用いて開発化合物の安全性(毒性)を評価する非臨床試験(以下,非臨床安全性試験)は必須である。この非臨床安全性試験は医薬品GLPといわれる厚生労働省令を遵守して行わなければならない。医薬品GLPの目的は,非臨床安全性試験を適切に実施し,得られたデータの質や信頼性を確保することであり,そのためにハードおよびソフトの両面に遵守事項が定められている。また,医薬品GLPは国際的にハーモナイズが進んでおり,データの相互受け入れも可能になっている。
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9. |
毒性試験の基礎
(海野 隆) |
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医薬品や医療機器には,有効性と安全性が担保されなければならない。しかも医薬品・医療機器の開発には途方もない費用に加え,時間,労力さらに前臨床試験では実験動物を要する。前臨床試験,とりわけ毒性試験を高い精度と信頼性をもって遂行することは,病に悩む患者の負託にも応えるものである。このためには毒性とは何かという基本的な命題を的確に理解するとともに,最新の科学的知識・技術に基づき,ガイドラインを含む行政の動向も勘案し,動物福祉の精神をもって試験を遂行していくことが重要である。
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10. |
臨床試験の立案と計画
(樋之津史郎) |
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臨床試験を実施する際には,その臨床試験がどのような枠組みの中で行われるのかを確認し,それぞれの枠組みに必要な手続きを知っておかなければならない。どのような臨床試験であってもヘルシンキ宣言をはじめとする倫理的原則を熟知しておかなければならない。臨床試験を立案する際には,研究組織の構成と,プロトコルとCRFの作成が中心になる。臨床試験の計画を立てる際には,立案した組織に則り,タイムラインを考慮に入れて具体的な計画を立てていく。研究に参加するすべてのメンバーは十分な知識と経験と,研究に対する真摯な態度が必要である。
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11. |
臨床試験の統計的デザイン
(手良向 聡) |
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医療分野において予防,診断,治療に関する標準的な技術を確立するためには,臨床試験による仮説の検証というプロセスが必須である。臨床試験には,基礎・臨床医学に基づく十分な洞察とともに統計学に基づくデザインが不可欠であり,基礎・臨床医学の研究者,試験統計家などが中心となり,質の高い試験実施計画書を作成しなければならない。何度も同じ実験を繰り返すことが可能な基礎実験と異なり,臨床試験を同一のデザインで繰り返すことは許されない。
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12. |
臨床試験におけるデータマネジメントの基礎
(多田春江) |
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データマネジメントとは,試験の様々な段階で臨床試験データを適切に管理・集計し,データの信頼性を保証する,データの品質管理において欠かせない業務である。にもかかわらず,データマネジメント業務に対する認知度や必要性に対する理解度は低いのが現状である。臨床試験データの品質管理と品質保証に対する考え方を説明するとともに臨床試験の流れに沿って具体的なデータマネジメント業務についても紹介する。
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13. |
知っておきたい臨床試験におけるインフォームド・コンセントとモニタリング:
CRCとモニターの役割
(新美三由紀) |
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研究の要件で基礎研究と臨床試験が大きく異なるのは,倫理性,遵守性,効率性である。これを実現するためにインフォームド・コンセントとモニタリングは重要である。インフォームド・コンセントとは,患者の自律的あるいは自らの決意による選択を保護し,これを可能にすることである。モニタリングとは,患者の人権,安全,福祉が保護され,計画書と法規・ガイドラインが遵守され,報告された臨床試験データが正確かつ完全で原資料と一致していることを確認する,品質マネジメント活動の1つである。
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14. |
Post-Marketing Surveillance 制度の基礎的知識
(漆原尚巳・川上浩司) |
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医薬品の候補物質が一般の医療現場で使用できるようになるためには,薬事法に則り,申請者(製薬企業であることが多い)が提出した,物性および製造方法,非臨床試験,申請承認のための臨床試験(治験)の成績および各種資料に基づき規制当局が審査を行い,製造販売承認が与えられる必要がある。このように新医薬品として承認された医療用医薬品が市場に出荷・上市された後には,承認を取得した製造販売業者が継続して実際の医療現場における安全性および有効性に関する情報の収集とその評価を行い,適正使用のための対策を講じる責務を負う。そのための制度的枠組みであるpost-marketing surveillance(PMS)について概括する。
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●索引 |