編集後記

 通巻54号をお届けする運びとなりました。本号では,福田篤先生(東海大学医学部)と斉藤典子先生(がん研究会がん研究所)に特集「non-coding RNA研究の最前線」のコーディネーターをご担当いただきました。生命科学の根幹にかかわるnon-coding RNA研究は,基礎から疾患,さらには創薬へと急速な展開を見せており,今回,両先生のお力添えにより,第一線でご活躍される研究者の皆様にご執筆をお願いすることができました。RNA−クロマチン相互作用網羅的解析法,小分子RNA,X染色体不活性化,乳がん関連ノンコーディングRNAや初期胚発生に関わる新規lncRNA,核内構造体アーキテクチャRNA,脳腫瘍研究や非コードRNA病など,non-coding RNA研究の広がりと奥深さを実感していただける特集号となったことを,編集委員として誠に嬉しく思います。特集以外の連載企画も,今回も充実したラインナップとなりました。「目で見てわかる遺伝病」では消化器内科編として家族性大腸腺腫症(胃病変)を取り上げていただきました。Research「ヒト遺伝子研究最新動向」では,遺伝的要因による疾病リスクを評価する強力な手法であるポリジェニックリスクスコア解析についての解説をお届けします。Learningでは,遺伝性疾患の基礎知識として骨形成不全症,さらにAPOE 遺伝学的検査と新規抗アミロイドβ抗体薬に関する解説をご執筆いただきました。Methodでは,ゲノム研究における最先端技術であるハプロタイプフェーズドT2Tゲノムアセンブリについて取り上げています。また,認定遺伝カウンセラーによる連載「Genetic Counseling」「CGC Diary」では,日々の臨床実践に根ざした深い示唆に富む内容となりました。「Ties 絆」では,FOXG1症候群患者家族会(FOXG1 JAPAN)の活動をご紹介いただきました。さらに「NEXUS」では,酵母をモデルとしたエピジェネティクス研究という,ヒト以外の生物種を扱う視点からの記事を掲載することで,本誌ならではの多様性を継続できたものと感じております。
 本号の企画・編集にあたりご執筆者の皆様,そしてご協力くださった多くの関係者の方々に心より御礼申し上げます。今後も本誌が,研究者・臨床家・遺伝カウンセラーの皆様にとって活きた情報源であり続けられるよう,編集委員一同尽力してまいります。通巻55号以降も変わらぬご指導・ご支援を賜りますようどうぞ宜しくお願い申し上げます。

令和7年11月25日
編集委員
国立成育医療研究センター 研究所 周産期病態研究部
中林一彦