この度,通算53号の遺伝子医学を発行できる運びとなりました。
本号の特集は,「出生前遺伝学的検査の最前線と遺伝カウンセリング」です。特集コーディネーターは東京慈恵会医科大学産婦人科学講座教授の佐村 修先生にお願いいたしました。生殖周産期領域のテーマが特集に選ばれたのは第28号(復刊第3号)「周産期の遺伝医学」,第35号(復刊第10号)「着床前診断」以来となり,4年半ぶりになります。2013年に始まった非侵襲性出生前遺伝学的検査(NIPT)をきっかけにわが国では出生前検査に注目が集まりました。2021年には厚労省の専門委員会からNIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書が出され,「妊娠・出産・育児に関する包括的な支援の一環として出生前検査に関する情報提供を行う」という方針が打ち出され,これまで約20年間にわたり「医師が妊婦に対して本検査の情報を積極的に知らせる必要はない」としていた方針が変更されました。そのような国内の現状や今後の展開についてまとめていただきました。
特集以外ではResearch(ヒト遺伝子研究最新動向)として「がんの全ゲノム解析実行計画の現状」を取り上げ,遺伝性疾患や技術をシリーズで学ぶためのLearning,Methodもこれまで同様に充実した記事を集めることができました。「目で見てわかる遺伝病」は消化器内科編の第3回として「家族性大腸腺腫症(大腸病変)」を取り上げました。「Genetic Counseling(実践に学ぶ遺伝カウンセリングのコツ)」では精神疾患領域をテーマとし,「私の遺伝カウンセリング日記(CGC Diary)」では周囲との連携の中での立ち位置をご執筆いただきました。NEXUS(ヒト以外の遺伝子に関連する研究)では「昆虫の内分泌制御をフタホシコオロギでアプローチ」と「Sry機能を消失した哺乳類の新しい性決定の仕組み」という二つのテーマを取り上げました。「当事者会,支援団体の紹介(Ties 絆)」は近年注目されはじめたHNRNP疾患の会であるHNRNP疾患患者家族会/HNRNP JAPAN様にご執筆いただきました。
最後になりますが,本誌編集にご協力いただいた皆様に心より御礼申し上げるとともに来年1月発行予定の第54号以降もご指導賜りますよう引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
令和7年8月25日 |
編集幹事
北海道大学病院臨床遺伝子診療部
山田崇弘 |
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