編集後記

 この度,季刊誌「遺伝子医学」の通巻51号を発行できる運びとなりました。本号は,「拡大新生児マススクリーニング(eNBS)の現状と今後の展望」を特集のテーマとしました。コーディネーターは,2023年度の日本遺伝カウンセリング学会の第18回遺伝カウンセリングアドバンストセミナーで「eNBS」が取り上げられた際に実行委員長を務められた酒井規夫先生(医誠会国際総合病院難病医療推進センター副センター長)と濱﨑考史先生(大阪公立大学大学院医学研究科発達小児医学教授)にお願いをいたしました。eNBSは,その対象疾患に,新生児の家系内の保因者や未診断の罹患者がこれまでの診断アプローチと異なる形で同定される可能性がある疾患や,診断・治療のタイミングが必ずしも新生児期である必要がない疾患などが含まれており,両親の意思決定を含め現場では様々な課題が認識されています。また,実施地域や病院ごとの契約状況の違いによる不均一性があります。疾患ごとあるいは地域ごとの状況や課題をご専門の先生方にご執筆をいただくことができ,大変魅力的な特集となりました。
 特集以外では,「目で見てわかる遺伝病」の消化器内科編第1回で「Cowden症候群/PTEN過誤腫症候群」を,「Research(ヒト遺伝子研究最新動向)」で「重症複合免疫不全症に対する診断と治療」を,「Learning」で「エマヌエル症候群」と「がんゲノムプロファイリング検査」の二つの話題を,「NEXUS(ヒト以外の遺伝子に関連する研究)」で「繊毛虫の大規模ゲノム再編」を取り上げました。また,「Method」では「インプリンティング疾患症例診断のための臨床検査と研究解析の実際」を紹介いただいています。「Genetic Counseling」では,「発症前診断・出生前診断の事例から:遺伝カウンセリングにおける親子間・夫婦間の調整」として実践的な内容を解説いただきました。「Ties 絆(当事者会,支援団体の紹介)」では女性のがん当事者会(乳がん・卵巣がん・子宮がん,HBOC)「つばなの会」様にご執筆いただきました。「CGC Diary(私の遺伝カウンセリング日記)」のリレー執筆も継続し,原著論文も1編掲載をして,さらに充実した内容になっています。
 最後になりますが,本誌編集にご協力いただきました皆様に心より御礼申し上げるとともに,次号以降の本誌の発刊に関しましても引き続きご指導賜りますようお願い申し上げます。

令和7年2月17日
編集委員
愛知県がんセンター研究所
井本逸勢