大変発刊が遅くなりましたが,ようやく遺伝子医学年通算48号復刊23号をお届けできる運びとなりました。
本号は,西垣昌和先生(国際医療福祉大学)に特集「遺伝性腫瘍の新たな視点」のコーディネーターをお願いし,蒔田芳男先生(旭川医科大学)と私とでサポートさせていただきました。ゲノム医療の社会実装が進む中で,病的バリアントの一般集団中の頻度が比較的高く,主な表現型であるがん発症の浸透率が必ずしも高くなく,かつがんの予防介入や治療選択に有用な原因遺伝子が複数知られるといった特性をもつ遺伝性腫瘍は,その先頭を走る領域の一つでもあります。一方で,遺伝性腫瘍診療を推進していくために,今考えておくべきあるいは解決に向けて動き出しておくべき課題も存在しています。本特集は,個々の症候群の解説や遺伝学的検査の結果の解釈など,通常のテキストに盛り込まれる視点はあえて避け,それら以外の視点から幅広い分野の専門家や一般市民の代表の方々に遺伝性腫瘍をとらえなおしていただきました。本特集が,みなさまのこの領域の理解をより深め,ひいてはゲノム医療の推進につながることを期待しています。
特集以外にも,これまで同様に充実した記事を集めることができました。「目で見てわかる遺伝病」では神経内科編の第4回として「トリプレットリピート病」を取り上げ,遺伝性疾患や検査をシリーズで学ぶための「Learning」では「軟骨無形成症」,「MSIとTMB」の二つをご紹介しています。「Hot Topics」では「オミックス情報とAIを用いたがんの予後予測」を,「Method」では「VUSに対する機能解析によるPathogenicityの推定法」を解説いただいています。「Ties 絆(当事者会,支援団体の紹介)」では2型コラーゲン異常症患者・家族の会様にご執筆いただきました。「CGC Diary(私の遺伝カウンセリング日記)」のリレー執筆もパワーアップしながら継続しており,「NEXUS(ヒト以外の遺伝子に関連する研究)」では「光合成能喪失によるゲノム進化」という興味深い話題をご寄稿いただいています。
他の医学雑誌では見られないような多彩で充実した内容が,遺伝子医学の特徴です。編集にご協力いただきました皆様に心より御礼申し上げるとともに,次号以降の本誌の発刊に関しましてもご指導賜りますよう,引き続きよろしくお願い申し上げます。
令和6年6月11日 |
編集委員
愛知県がんセンター研究所
井本逸勢 |
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