編集後記

 2023年に入り,COVID-19も感染症上の取り扱いが変わるなど,新しいフェーズに移りつつある中,多くの皆様のご協力をいただき,通巻44号・復刊19号の遺伝子医学を発行できる運びとなりました。
 本号の特集は,「遺伝診療における遺伝学的検査の最前線」です。コーディネーターには,鳥取大学研究推進機構の難波栄二先生,国立成育医療研究センターゲノム医療研究部部長の要 匡先生をお迎えしました。遺伝診療の場で,遺伝学的検査は,長くほとんどが自費診療や研究検査として行われてきました。しかし,がんと難病領域でゲノム医療の社会実装が進められていく中で,保険診療で実施可能な遺伝学的検査が増えるとともに,網羅的な検査も保険診療や研究検査として実施可能な領域が拡大しています。このため,遺伝医療の専門家のみならず各診療科医師にはこれらを使いこなせる知識や技術が求められています。検査を適正に実施し,結果を正しく解釈することはもちろん,遺伝カウンセリングが適切に実施されることが必要です。これらの点に関して,この領域の専門の先生方に執筆をお願いすることで,少し先の未来を含め,遺伝診療における遺伝学的検査の現状を俯瞰できる特集となっていると自負しています。
 特集以外にも,これまで同様に充実した記事を集めることができました。「Research(ヒト遺伝子研究最新動向)」では「先天性甲状腺機能低下症の遺伝学」を取り上げ,遺伝性疾患や技術をシリーズで学ぶ「Learning」では「筋疾患」,「特発性血栓症」,「がんゲノム領域でのLiquid biopsy」を,「Method」では「グライコミクス解析」をご紹介しています。「目で見てわかる遺伝病」では整形外科編の最終回として「先天性多発性関節拘縮症」,「神経線維腫症1型」を取り上げています。「Ties 絆(当事者会,支援団体の紹介)」では北海道小鳩会様にご執筆いただきました。ヒト以外の遺伝子に関する研究として,NEXUSでは日本マウスクリニックをご紹介いただいています。遺伝カウンセリングに関する話題も,Genetic Counseling,CGC Diaryで継続して取り上げています。また,本誌では初めてとなる原著論文も掲載することができました。皆様のご投稿をお待ちしております。
 最後になりますが,本誌編集にご協力いただきました皆様に心より御礼申し上げるとともに,次号以降の本誌の発刊に関しましても引き続きご指導賜りますよう,どうぞよろしくお願い申し上げます。

令和5年3月2日
編集委員
愛知県がんセンター研究所
井本逸勢