編集後記

 通算42号復刊第17号を発刊できる運びとなりました。本号では,コーディネーターを秦健一郎先生(群馬大学・国立成育医療研究センター)と長谷耕二先生(慶応大学)にお願いし,特集「環境の影響とその遺伝・DOHaD」を組んでいただきました。社会医学的な観点からの疫学研究,産婦人科学的な観点からのエピゲノム研究,環境の影響が次世代に伝播するメカニズムを新たに解明した研究など,注目度の高い様々な研究成果についてご執筆いただいております。特集全体として眺めると,研究対象生物種はヒト・マウス・ショウジョウバエ・腸内細菌と幅広く,着目している生命現象も,胎児発育・免疫応答・脳発達・寿命・代謝などと多彩です。これらの多様な知見を理解することで,この研究分野における共通原理のようなものが見えてくるかもしれません。
 特集以外の企画でも,多彩な記事を集めることができました。まずは「目で見てわかる遺伝病」で整形外科編の第三回目として,点状軟骨異形成症と大理石病を取り上げていただきました。Research(ヒト遺伝子研究最新動向)は太田博樹先生による三回シリーズ「古代ゲノム研究の最先端」の最終回です。遺伝性疾患や遺伝子関連検査をシリーズで学ぶLearningでは,家族性高コレステロール血症,ヤング・シンプソン症候群,薬理遺伝学検査の現状,を取り上げました。Method(研究手法)では遺伝子発現レベルの遺伝的多様性を単一細胞分解能で解析するための新たな統計手法GASPACHOを開発者である熊坂夏彦先生にご解説いただいております。Statistical Genetics(遺伝統計学の基礎・シリーズ13回目)では,連鎖不平衡スコア回帰とその拡張方法について解説していただいております。
 ヒト以外の遺伝子に関する研究を連載するNEXUSではカニクイザルを用いた生命科学研究の最新動向をご紹介していただいております。認定遺伝カウンセラー®によるリレー記事「Genetic Counseling(実践に学ぶ遺伝カウンセリングのコツ)」と「CGC Diary(私の遺伝カウンセリング日記)」はますますの充実ぶりとなっております。 「Ties 絆(当事者会,支援団体の紹介)はSBMAの会(球脊髄性筋萎縮症患者会)様にお願い致しました。本誌編集にご協力いただきました皆様に心より御礼申し上げるとともに,通算43号第18号以降もご指導賜りますよう引き続きどうぞ宜しくお願い申し上げます。

令和4年9月5日
編集委員
国立成育医療研究センター研究所周産期病態研究部
中林一彦