編集後記

 遺伝子医学の復刊第9号を発行できる運びとなりました。
 本号の特集は,「ゲノム編集医療−技術開発・治療応用戦略を中心に」をテーマとしました。特集コーディネーターは東京大学医科学研究所実験動物研究施設先進動物ゲノム研究分野/システム疾患モデル研究センターゲノム編集研究分野の真下知士先生と吉見一人先生にお願いいたしました。ゲノム編集は近年非常に注目を集めており,遺伝子医学の特集としても復刊後に取り上げるのは2度目になります。前回は通巻27号復刊第2号において「ゲノム編集と倫理」として特集いたしました。この時は中国においてヒト生殖細胞系列にゲノム編集を行った児が出生したとの報道があり,その倫理面に注目が集まっていた時期でありました。今回は技術開発・治療応用戦略を中心に特集を組んでいただき,その基礎研究から臨床応用へ向けた現状と近未来への見通しまでをそれぞれの専門を代表する立場の先生方にご執筆いただきました。
 特集以外ではミトコンドリアを標的とする遺伝子治療用RNAナノカプセルの創製を扱ったHot Topics(話題),遺伝性疾患や技術をシリーズで学ぶためのLearning,Lecture,Method,Technology,Statistical Geneticsもこれまで同様に充実した記事を集めることができました。巻頭の「目で見てわかる遺伝病」の耳鼻科編は「ダウン症候群」を取り上げていただきました。普段目にすることの多いダウン症候群について耳鼻科の面から知ることは大いに意義のあることと思っております。ヒト以外の遺伝子に関する研究を連載するNEXUSでは,今回は「ヒトとイヌの共進化とそれに関わる遺伝子の探索」というテーマをご執筆いただきました。遺伝カウンセリングのシリーズでは,本号では「遺伝カウンセリングの実施時期やクライエントの立場に配慮した対応」という時間的・社会的な問題を取り上げていただきました(Genetic Counseling)。また,「私の遺伝カウンセリング日記(CGC Diary)」もこれまで同様に生き生きとした若い認定遺伝カウンセラー®の日常を執筆いただきました。新しいシリーズ「当事者会,支援団体の紹介(Ties 絆)」はトップバッターを前号で務めていただいたクラヴィスアルクス様からバトンをフェニルケトン尿症親の会連絡協議会様につないでいただき,その活動をご紹介いただきました。このシリーズは今後の本誌の目玉として育ててゆきたいと思っております。最後になりますが,本誌編集にご協力いただいた皆様に心より御礼申し上げるとともに第10号以降もご指導賜りますよう引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。

令和2年8月20日
編集幹事
京都大学医学部附属病院遺伝子診療部
山田崇弘