編集後記

 2022年が始まりましたが,COVID-19感染の国内での状況に関しては,まだまだ予断を許さない状況です。新たな変異株が発見される一方で,ワクチンの追加接種や経口治療薬など感染への対応も重層的になり,少なくとも国内では新しいフェーズに移りつつあるように見えます。そのような中ではありますが,多くの皆様のご協力をいただき,通巻39号・復刊14号の遺伝子医学を発行できる運びとなりました。
 本号の特集は,「ゲノム医療におけるデータベース−使い方とコツ」です。コーディネーターは,日本大学医学部病態病理学系臨床検査医学分野教授の中山智祥先生,浜松医科大学医化学講座教授の才津浩智先生をお迎えし,私と3名で務めさせていただきました。ゲノム医療の社会実装ががんと難病領域で進められていく中で,ゲノム解析の結果得られるバリアント情報を解釈し臨床上有用な情報を抽出していくために,遺伝医療の専門家のみならず各診療科医師をはじめ医療従事者全般には各種のデータベース・Webツールを使いこなせる知識や技術が求められています。「ゲノム医療に役立つ」ものに限定しても多数のデータベースやWebツールがある中で,初学者が,用途別にどんなものがあり,どう使いこなしていけばいいのかを知るための第一歩として,ミニマムエッセンスをat a glanceで示したいというのが,企画の第一歩でした。そこで,この領域の専門家であり,日本遺伝子診療学会においてジェネティックエキスパートの育成にそれぞれ認定制度委員会担当理事,委員長として取り組まれている中山先生,才津先生にご協力をいただき,今回の企画を練り上げました。
 特集以外にも,これまで同様に充実した記事を集めることができました。「Research(ヒト遺伝子研究最新動向)」として「クロマチンの高次構造と転写制御」を取り上げ,遺伝性疾患や技術をシリーズで学ぶための「Learning」では「脳形成異常」,「Rubinstein-Taybi症候群」の二つをご紹介しています。「Lecture」では「遺伝医学と倫理」を,「目で見てわかる遺伝病」では皮膚科編の第5回として「掌蹠角化症」を取り上げました。「Ties 絆(当事者会,支援団体の紹介)」では日本ハンチントン病ネットワーク様にご執筆いただきました。「CGC Diary(私の遺伝カウンセリング日記)」のリレー執筆も継続しております。
 最後になりますが,本誌編集にご協力いただきました皆様に心より御礼申し上げるとともに,次号以降の本誌の発刊に関しましても引き続きご指導賜りますよう,どうぞよろしくお願い申し上げます。
令和3年11月27日
編集委員
愛知県がんセンター研究所
井本逸勢