編集後記

 この度,遺伝子医学の復刊第8号を発行できる運びとなりました。本号では最新の遺伝子配列解読技術である「Long read sequencer」を特集のテーマとし,東京大学大学院新領域創成科学研究科の鈴木穣先生にコーディネーターをお願いいたしました。ゲノムを一度に長く読むことができるようになったことで,今まで見ることのできなかった複雑なゲノム構造異常を検出できるようになりました。この技術により,ゲノム解析がさらに進み,ゲノムの理解が飛躍的に深まることが期待されています。今回の特集号では,ロングリードシークエンサーを用いた解析の基本的なところから,本技術を用いたヒト単一遺伝子疾患解析,がんゲノム解析,日本人基準ゲノム配列構築,エビゲノム解析等々,それぞれの領域の第一線で解析されている先生方に幅広いテーマでご執筆いただき,大変魅力的な内容にしていただきました。
 特集以外では,「Hot Topics(話題)」として「胎児治療の最前線」,「Research(ヒト遺伝子研究最新動向)」として「反復配列のエピジェネティック制御」,「Technology(技術)」として「メチローム解析技術の最近の動向」をご執筆いただきました。また,「Learning③(遺伝子関連検査を知る)」では,疾患の原因となるバリアントか否かの判定の際に考慮される「ACMGガイドライン」についてご解説いただきました。本号では「目で見てわかる遺伝病」としてPendred症候群,「Learning①,②」として「てんかん」と「シュワルツ・ヤンペル症候群」をご紹介いただきました。ヒト以外の遺伝子に関する研究をご紹介いただく「NEXUS」では,
 「ゲノム情報を用いた発生過程の進化研究」をお願いいたしました。今回の号も実用的な内容が多く,非常に充実した号となりました。最後になりますが,本誌編集にご協力いただきました皆様に心より御礼を申し上げます。第9号以降もご指導賜りますようお願い申し上げます。

令和2年5月22日
編集委員
横浜市立大学医学部遺伝学
三宅紀子