編集後記

 この度,遺伝子医学の復刊第6号を発刊できる運びとなりました。本号の特集は,コーディネーターを牛島俊和先生(国立がん研究センター研究所)にお願いし,「エピゲノム医療」と致しました。エピゲノムの基本原理に始まり,先天異常症候群・がん・炎症性疾患・神経変性疾患・代謝疾患といった多様な疾患に加えて,生殖・再生医療分野でのエピゲノム解析の状況を第一線でご活躍中の先生方にご紹介いただくことができました。昨今話題となっているエピゲノムの経世代影響(エピゲノムの変化が世代を超えて伝わるのか?)についても最近の知見をご紹介いただくことができました。また特集記事以外でも,Hot Topcs(話題)でエピゲノム編集,Technology(技術)でヒストン修飾解析について,画期的技術を独自開発された先生方から解説記事をご寄稿いただきました。
 エピゲノム情報は疾患病因・病態の解明,病型分類,予後予測などに活用され,エピゲノム研究から得られた新知見は,例えば本特集内でご紹介いただいたエピゲノム修飾薬などの形で,治療に応用されます。ゲノム医学・医療におけるエピゲノムの重要性は今後ますます高まると予想されます。本雑誌では,今後も,エピゲノム医療に関わる最新情報を読者の皆様にお届けしたい次第です。
 特集以外では,二回目となった耳鼻科疾患シリーズの「目で見てわかる遺伝病」や遺伝性疾患をシリーズで学ぶためのLearningの三記事に始まり,Genetic CounselingならびにCGC Diaryでの遺伝カウンセリング関連記事,MethodsならびにStatistical Geneticsでのゲノム統計遺伝学関連記事など,充実した記事を集めることができました。ELSI(倫理・法・社会)では,ヒトゲノム研究と医療の実施に伴う課題についてご執筆いただきました。さらにヒト以外の遺伝子に関する研究を連載するNEXUSでは今回初めて植物に関する研究をご紹介することができました。
本誌編集にご協力いただきました皆様に心より御礼申し上げるとともに,第7号以降もご指導賜りますよう引き続きどうぞ宜しくお願い申し上げます。

令和元年12月6日
編集委員
国立成育医療研究センター研究所周産期病態研究部
中林一彦