編集後記

 1年延期された東京オリンピックも終わりましたが,COVID-19は易感染性のデルタ株の広がりとともにその感染拡大はとどまるところを知らず不安な日々が続いております。そのような中ではありますが,皆様のご協力をいただき通巻38号,復刊第13号の遺伝子医学を発行できる運びとなりました。
 本号の特集は,「成人学習理論から学ぶ臨床遺伝教育のこれから」です。特集コーディネーターは旭川医科大学病院遺伝子診療カウンセリング室教授の蒔田芳男先生と愛知県がんセンター研究所長の井本逸勢先生にお願いいたしました。臨床遺伝専門医の到達目標が2019年に行動目標として全面改訂され,来年度からはこの新たな行動目標に基づいた臨床遺伝専門医の認定試験が始まります。また,今年はそれに応じた臨床遺伝専門医のためのテキストシリーズが発刊されるなど,臨床遺伝教育にとっては大きな変革の年でもあります。そこで,臨床遺伝専門医制度委員会の委員長を長年お務めになり,医学教育専門家でもある蒔田芳男先生を中心に,現在日本人類遺伝学会と日本遺伝カウンセリング学会の各種教育アクティビティの今後に取り組んでおられる井本逸勢先生にもご協力いただき,今回の企画をいたしました。
 特集以外ではHot Topics(話題)として「がんゲノム」を,Research(ヒト遺伝子研究最新動向)として「核膜孔を介した分子輸送機構の構造的理解」を取り上げ,遺伝性疾患や技術をシリーズで学ぶためのLearning,Lecture,Method,Technologyもこれまで同様に充実した記事を集めることができました。「目で見てわかる遺伝病」は皮膚科編の第4回として「眼皮膚白皮症」を取り上げました。「Genetic Counseling(実践に学ぶ遺伝カウンセリングのコツ)」ではがん診療をテーマとし,「CGC Diary(私の遺伝カウンセリング日記)」では遺伝カウンセリングと遺伝カウンセラー自身の多様性について執筆いただきました。安定のStatistical Genetics(遺伝統計学の基礎/シリーズ)では,「混合線形モデルによる量的形質に対する全ゲノム関連解析 ①基礎とfastGWA」を,ELSI(倫理・法・社会)では今年二つの研究指針を統合して新たに出された「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の解説を,NEXUS(ヒト以外の遺伝子に関連する研究)では「嗅覚受容体遺伝子の進化」を取り上げました。「Ties 絆(当事者会,支援団体の紹介)」は骨形成不全症協会(ネットワークOI)様にご執筆いただきました。
 最後になりますが,本誌編集にご協力いただいた皆様に心より御礼申し上げるとともに来年1月発行予定の第39号復刊第14号以降もご指導賜りますよう引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
令和3年8月26日
編集幹事
京都大学医学部附属病院遺伝子診療部
山田崇弘