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RNAと創薬
編集: 中村義一東京大学医科学研究所遺伝子動態分野教授)

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要 旨

(第2章、第3章)

第2章 創薬ターゲットとしてのRNA
1.
RNAスプライシング異常と疾患 (片岡直行)

真核生物では,転写によって産生されたmRNA前駆体は,多くの場合イントロンと呼ばれる介在配列によって分断化されている。そこでスプライシングによってイントロンが除かれてエクソン同士が連結されmRNAとなり,細胞質に輸送されてタンパク質合成の鋳型として働く。そのため,スプライシングは非常に正確な反応でなければならない。もしスプライシングにエラーが生じた場合,異常なタンパク質が産生され,細胞にとって有害となり,個体レベルでは疾患として現れる。現在までに知られているスプライシング異常と疾患について紹介し,その治療の試みについて解説する。
2.

リボソーム構造と創薬 (内海利男)

近年,長い間不可能とされてきたリボソームの結晶化に成功し,生体内のすべてのタンパク質を合成する巨大RNAマシーンとしてのリボソームの実像が原子・分子レベルで理解されるようになった。この成果を利用して,バクテリアのリボソームに結合してタンパク質合成を抑制する各種抗生物質の作用機構も解析され,これまでに約30種類の薬剤作用の仕組みが結晶構造で明らかにされている。これらの研究はさらに,最近問題になっている薬剤耐性菌による耐性機構の理解と,新規薬剤開発に向け展開をみせている。

3.
mRNA品質管理と創薬 (稲田利文)

遺伝情報を正確に発現するために,細胞はmRNAの品質を厳密に監視して不良品を速やかに除去する機構を保持している。遺伝性疾患の多くに認められるナンセンス変異を保持するmRNAは,ヒトから酵母まで普遍的に存在する分解系(NMD)により分解される。このNMDにおいて,翻訳は様々な異常mRNAを認識し分解機構を発動させる必須の役割を担っている。また,NMDにおけるスプライシングの役割や,新しい分解機構の存在が近年明らかになった。mRNA品質管理機構の分子機構と,それに基づく治療の現状と創薬の可能性について解説したい。
4.
翻訳開始因子(elF)の異常による癌化と創薬 (望月潔隆・小黒明広・中村義一)

急激な細胞増殖を行う癌細胞にとって,タンパク質合成速度の増加は必須であり,そのための翻訳開始因子(eIF)の発現量の増加が様々な癌細胞中で最近報告されている。タンパク質合成の異常と癌組織の悪性化には密接な関係があり,eIF発現の上昇は癌関連因子のタンパク質合成速度を飛躍的に上昇させ,癌悪性化を促進することが明らかとなってきた。本稿ではeIFの細胞内シグナル伝達とeIFの過剰発現による癌化の進行に焦点をあて,創薬のターゲットまたは癌化の指標としてのeIFについて紹介する。
第3章 未知なるRNAと創薬の地平
1.
創薬科学におけるnon-coding RNAの可能性 (影山裕二)

ゲノムプロジェクト/cDNAプロジェクトの進展に伴って,われわれの細胞内には多くの非翻訳RNA(non-coding RNA:ncRNA)が存在していることが明らかとなった。これらの報告は生体内の多くの素過程がRNAを介して行われていることをうかがわせるものであり,疾患においてもncRNAが重要な役割を果たしていることが予想される。現在までに得られている疾患とncRNAとの因果関係についての知見を含め,今後の研究において,ncRNAがどのように創薬科学と結びついていくかについて,その可能性を考える。
2.
RNP アーキテクチャー (井上 丹)

シンセティックバイオロジーという名前の新しい研究分野が提唱されている。シンセティックバイオロジーとは,「生体高分子,また,遺伝情報の伝達・制御に関わる分子を用いることで構築可能となるシステムを,分子生物学研究の成果をもとに新しくデザイン・作製する研究」の総称である。また,「情報,分子,エネルギーのネットワークの制御技術」に関わるバイオナノテクノロジーをも含む新分野の総称ともいえる。従って,この分野は分子生物学とは相補的な関係にある。本稿では,RNA-タンパク質複合体(RNP)を,シンセティックバイオロジー分野の1つの素材と捉え,そのナノスケールでのデザインや作製,応用の可能性について述べる。
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