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疾患プロテオミクスの最前線
-プロテオミクスで病気を治せるか-
編集: 戸田年総(東京都老人総合研究所プロテオーム共同研究グループリーダー)
荒木令江(熊本大学大学院医学薬学研究部腫瘍医学分野)

本書籍をご購入の場合は ……………… 1冊 本体 5,714円+税

要 旨

(第8章)

第8章 疾患プロテオミクス研究の融合と展望
1. ポストゲノム時代のin silicoネットワークモデリング (久原 哲)

ポストゲノム研究の進展により,従来からの単一の遺伝子,タンパク質の解析結果を積み上げて全体のシステムを構築するボトムアップ法とは全く異なり,実験から産生される網羅的データを十分に説明するモデルを一気に構築していくトップダウン法の適用が可能となった。特に,最も現実のデータ蓄積がある遺伝子発現の網羅的データから遺伝子発現制御ネットワークのモデル構築が行われている。このトップダウンという新たな方向性は,その応用としてゲノム情報を基盤とする合理的創薬法の開発などに大きく貢献すると期待されている。
2.

cDNAプロジェクトから疾患プロテオミクスへの融合 −かずさDNA研究所の取り組み−
(古閑比佐志)

かずさDNA研究所では1994年の開所以来,基幹プロジェクトとしてヒト長鎖cDNA(KIAA遺伝子)の単離を行ってきたが,現在まで,その数は2000個を超える。コードされるタンパク質の多くはいまだ機能未知のものが多いが,今後はプロテオミクスの手法を用いて,その機能解明が進展することが期待される。わが国ならびに欧米で展開されたcDNAプロジェクトは,それ自身科学の進歩に多大な貢献を果たしたが,蓄積されたリソースをいかにタンパク質機能解析に活かすかも次なる大きな課題である。この観点から,われわれが現在行っているcDNAプロジェクトを利用した新たな取り組みに関して解説するとともに,世界的にみてどのような試みが行われているかについても併せて紹介する。

3. グライコームとの融合 (中川孝俊・近藤昭宏・谷口直之)

タンパク質を網羅的に解析し,病態との関連を探索する病態プロテオミクスが活発に行われている。一方,全タンパク質の60%は糖鎖修飾を受けており,糖鎖がタンパク質の機能に大きく関わっていることがわかってきている。技術的な革新は,これまで専門的な色合いの強かった糖鎖研究にも大きく影響を与えている。マススペクトロメトリーなどによる網羅的な糖鎖,および糖ペプチドの解析は,ますます盛んになると予想される。ファンクショナルグライコミクスは,糖タンパク質研究のこれからの研究方法論であり,そこから得られた結果はシステム糖鎖生物学の達成によって,より有益な情報をもたらすであろう。
4.

脂質メタボロームとの融合 (田口 良)

ポストゲノム研究の大きな課題であるタンパク質の機能解析においては,ゲノムやプロテオーム解析に加えメタボローム(metabolome)解析を融合させて行うことが非常に有効であることがわかってきた。メタボローム解析と,それに関与する酵素タンパク質のプロテオーム解析を対応させて位置づけることにより,病態などにおける代謝パスウェイの異常や制御メカニズムの変化の解明がより容易になると考えられる。そのためにメタボローム解析の手法,データベース,検索ツールなどの早急な整備が必要とされている。

5. リボヌクレオームとの融合−RNAの機能異常と疾患 (鈴木 勉・渡辺公綱)

機能性高分子の主役はタンパク質であり,RNAは単なる情報の伝達物質であるとみられがちであるが,RNA干渉やマイクロRNAの発見によって,RNA研究に対する認識が大きく変わりつつある。細胞内にはタンパク質をコードしないRNA(non-coding RNA=ncRNA)が大量に存在し,これらが機能性高分子として振舞い,細胞の営みや高次生命現象に関わる重要な働きを担っていることが次第に明らかになりつつある。また,最近ncRNAの異常が疾患の原因になっているという例が報告されつつあり,疾患の原因としてタンパク質の異常のみならず機能性RNAの異常も視野に入れる必要がある。遺伝子の約半分はncRNAであるともいわれ,ポストゲノム時代を迎えたいま,プロテオミクス研究とならんでRNA研究は大きく展開しようとしている。ここでは,ポストゲノムの新視点としてリボヌクレオームの重要性を提唱したい。
6. タンパク3000プロジェクト (倉光成紀)

日本の構造ゲノム科学の1995年以来の実績と,ポストゲノムシークエンスの時代的要請に基づいて,タンパク3000プロジェクトが2002年から開始された。この世界規模の協調プログラムの進展によって,創薬に要する時間が飛躍的に短縮されることが期待されるとともに,ヒトの疾患を原子レベル分解能で理解するための学問基盤を構築するために,世界初のモデル生物実験も始まった。
7. HUPOの活動と疾患プロテオミクス (中村和行)

ヒトゲノム研究の国際協力に重要な役割を果たしたヒトゲノム機構(HUGO)と同様に,ヒトプロテオーム研究の国際協力を推進するためにヒトプロテオーム機構(The Human Proteome Organisation : HUPO)が2001年2月に創立された。HUPOの使命と組織やHUPOが提案しているHuman Liver Proteome Project(HLPP),Human Plasma Proteome Project(HPPP),Human Brain Proteome Project(HBPP),また最近日本から提案されたHuman Disease Glycomics Proteome Initiative(HGPI)について紹介するとともに,ヒト疾患プロテオミクスの現状と将来について展望する。
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