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トランスレーショナルリサーチを支援する
再生医療へのブレイクスルー
-その革新技術と今後の方向性-
編集: 田畑泰彦京都大学再生医科学研究所生体材料学分野教授

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本書籍をご購入の場合は ……………… 1冊 本体 5,000円+税

要 旨
(第4章、第5章)

第4章 周辺環境制度,規則の整備
1. トランスレーショナルリサーチの方法と実際 (手良向 聡・福島雅典)

非臨床研究などの結果に基づき,ヒトに適用する妥当性が倫理的かつ科学的視点から医療の一形態として公式に認められた時に,初めてヒトを対象として行われる低分子化合物,高分子化合物,遺伝子,細胞,組織などを用いた臨床研究をトランスレーショナルリサーチ(TR)と定義する。最近,再生医療の技術はTRの対象として重要な位置を占めるようになってきている。TR実施の前提として,倫理審査体制,統計学に立脚した方法論,実務基盤が不可欠である。
2.

細胞治療・再生治療開発に関するレギュレーションと細胞プロセシング (笠井泰成・前川 平)

細胞治療とは,ヒト細胞を輸注・移植することにより行う治療法の総称である。細胞治療には,細胞プロセシングが必要となるが,これらの工程には医薬品の製造と同じように安全性と高い品質管理が必要である。わが国では,この細胞プロセシングに関する規則の整備が遅れており,細胞治療を含む先端医療の開発を進めるために早急な対応が求められているが,その現状を紹介する。また,細胞プロセシングを行うための施設(細胞プロセシングセンター:CPC)が具備すべき機能やその設計基準,および無菌的プロセシング技術や管理の必要事項などについて述べる。

3. バイオ分野における知的財産の活用 (寺西 豊)

バイオ医薬特許は1番があって2番がないという,この分野の特徴を説明し,そのうえで大学が生み出す研究成果を特許発明として確保するための権利関係を説明する。その特許発明に基づく知的創造サイクルの活性化のために解決すべき課題を述べ,最後に医療分野,特に再生医療における知的財産(発明)の権利化における現状の課題を指摘する。これらの情報が研究成果を権利化する際の参考になれば幸いである。
第5章 今後の方向性
1. 獣医科領域における再生医療 (岸上義弘)

再生医療が動物の医療の現場で,どのように展開しているのか。獣医科領域における再生医療の実際を紹介する。まず人と動物の医療の比較から動物医療の特色を探る。動物は自分で病状を訴えることがないため,上診が遅れがちとなる。そのため初診時には既に重篤な病体であることもしばしばである。そういった末期的状態,臓器不全状態を改善させるためには,再生医療の助けを借りなければならない。本稿では,獣医科領域における再生医療,特に皮膚,気管,骨,末梢神経,脊髄の再生について,その具体例を挙げながら紹介する。
2. 慢性疾患治療 (山本雅哉・田畑泰彦)

現在,血管,骨,軟骨など,大きく欠損あるいは傷害された臓器・組織に対する再生医療の臨床応用が試みられている。しかしながら,これまでに再生医療が対象としてきた疾患は,主として外科的疾患であり,その他の多くの疾患に対する再生医療は実現されていない。近年,内科的な慢性疾患の1つである線維性疾患のメカニズムが解明されつつあり,それに基づいた特定の分子を標的とした新しい治療が研究開発されるようになってきた。この分子標的治療に対してドラッグデリバリーシステムを応用することにより,外科的な再生医療と同様に,線維性疾患に対する内科的再生医療が可能になりつつある。
3. 遺伝子 -細胞ハイブリット治療- (永谷憲歳・片岡雅晴)

肺高血圧症,特に原発性肺高血圧症(PPH)発症の原因の1つとして肺血管内皮の機能障害が報告されている。正常の肺血管内皮細胞は様々な血管拡張因子を分泌して肺血管の低圧系を維持しているが,肺高血圧症では肺血管内皮機能障害により血管作動物質のバランスが破綻(収縮因子>拡張因子)している。すなわちエンドセリン(ET-1),トロンボキサンA2などの収縮因子が増加し,内因性血管拡張因子であるプロスタサイクリンや一酸化窒素の産生が相対的に低下している。このような病態に着目した治療として,①肺血管内皮細胞で産生される拡張因子の補充と収縮因子の抑制,②正常な肺血管内皮細胞の再生促進という治療法が考えられる。肺血管内皮由来の拡張因子の補充という観点からプロスタサイクリン合成酵素(PGIS)や一酸化窒素合成酵素(eNOS)遺伝子治療の効果が動物実験で証明され,また血管内皮前駆細胞(EPCs)を用いた肺血管内皮の再生治療が報告された。本稿では肺高血圧症に対する遺伝子治療,再生医療の可能性に関して最近の基礎的研究を中心に概説する。
4. 細胞増殖因子による変形性関節症治療 (高橋謙治・井上敦夫・田畑泰彦・久保俊一)

変形性関節症(OA)の広範囲に変性した軟骨では効果的な治療方法の開発は難しい。これに対して細胞増殖因子を応用して,硝子軟骨に近い軟骨組織を再生しようという研究が行われている。塩基性線維芽細胞増殖因子bFGF(basic fibroblast growth factor)を生体吸収性ゼラチン水和ゲルの使用に基づく徐放システムを用いてOA動物モデルの関節内に投与すると,OA進行抑制効果を示した。OA関節軟骨の再生にはbFGF徐放化システムと軟骨分化能を持つ細胞移植を組み合わせた再生医療が行える可能性がある。
5. 中枢神経変性疾患 (吉崎崇仁・岡野栄之)

神経変性疾患は,何らかの原因で特定のニューロンなどが減少する疾患であり,移植や自己細胞の刺激により不足した神経の機能を補うことがこの再生医療の目標であるが,この再生機転は発生と同様と考える。そのためには外来性にES細胞や胎児神経幹細胞を用いる,もしくは自己神経幹細胞に分裂刺激を加えて細胞を確保するだけでなく,これらの細胞からニューロンへと分化すること,機能に必要なタンパクや神経伝達物質を産生すること,軸索を伸展すること,シナプスを形成することなど数多くの段階を経る必要がある。
6. 歯科の再生医療 (原田英光)

歯科の再生医療は,歯が硬組織と軟組織の複合体としての特徴から他の医療分野とは異なる独特な背景を持っている。歯科医療に用いる人工材料は多彩であり,発生に基づく生物学的アプローチにも積極的に取り組んできた。今後は硬組織と軟組織の一体化した再生が課題であり,複数の細胞種と細胞成長因子,スキャホールドを用いた細胞間相互作用を構築する技術開発が必要である。歯は,“quality of life”の基本要素である「食」において重要な働きをする組織であり,そのため歯の再生医療は極めて社会的なニーズが高い。
7. 内耳変性疾患に対する再生医療 -その現状と今後の方向性- (小島 憲・伊藤壽一)

聴覚・平衡感覚をつかさどる内耳は有毛細胞や神経節細胞などにより構成される。これらの細胞は遺伝的要因や音響,耳毒性を持つ薬剤などにより容易に傷害され,変性・脱落してしまう。残念ながらヒトの内耳では有毛細胞と神経節細胞の自発的な再生は起こらないので,これらの細胞の変性・脱落による内耳機能障害は永続することになる。現在のところ,ステロイドホルモン剤などの薬剤や人工内耳が臨床応用されているが,現状では効果も適応も極めて限られている。この現状を打破するため,遺伝子導入や細胞移植,電子デバイスによる内耳の機能的再生が試みられている。近い将来,再生医療による機能的内耳再生が期待される。
8. 血管柄付き軟組織の再生 (田中嘉雄・成 耆徹・文元裕道)

コラーゲンスポンジ,FGF-2,動静脈血管束を組み合わせて有孔性chamber内で血管柄付き軟組織(肉芽組織)を再生した。このchamber内での組織再生と血管網の形成にFGF-2は促進的に作用し,動静脈血管束からの発芽型血管新生像(sprouting)も認められた。再生した肉芽組織に植皮を追加して人工の血管柄付き皮弁(prefabricated engineered skin flap)を作製し,血管吻合によって他の部位に移植することも可能であった。このように既存の動静脈血管束を用いてchamber内で「血管柄付き軟組織」を作製する方法は,栄養血管を有する再生組織構築の一方法として有用と思われた。
9. 腎臓内科疾患 (伊藤孝仁・倭 正也)

腎臓内科疾患領域において,再生医療がどのように応用できるのかは,いまだに極めてプリミティブかつ実験的な段階にとどまっている。しかしながら,医学的・社会的・医療経済的には,その潜在的な需要は高く,真剣に研究を進めるべき領域であることに疑いはない。本稿では,分野外の方へ,腎臓の基本的な事項と研究の現況説明を交えたうえで,腎臓内科医の視点から現状と将来の方向性について述べてみたい。
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