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再生医療へのブレイクスルー
-その革新技術と今後の方向性-
編集: 田畑泰彦京都大学再生医科学研究所生体材料学分野教授

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要 旨
(第2章、第3章)

第2章 材料,技術,方法論の研究開発
1.足場材料と関連技術
1) 生理活性ペプチドの合成と組織工学用材料への応用 (平野義明)

近年の分子生物学・細胞生物学の急速な進歩により,様々なタンパク質の1次構造とその機能の関係が解明されつつある。再生医療分野においても,タンパク質である細胞増殖因子をはじめとする細胞間シグナル伝達分子や構造物としての細胞外マトリクス中のタンパク質が注目されている。これらタンパク質の活性部位を模倣したり,ペプチド化学を駆使した小さなタンパク質の de novo デザインも重要であり,再生医療へのブレイクスルーになると考えられる。本稿ではペプチドの合成手法からペプチドの自己組織化を利用したバイオマテリアルについて述べる。加えて,タンパク質の活性部位を利用した再生医工学と再生医療分野への応用の可能性について述べる。
2)

基材表面が細胞の形に与える影響 (藤本啓二)

細胞を基材表面に播種して培養する際には,その化学的構造および幾何学的構造が細胞の形作りにとって重要になる。基材の形状が細胞側のシステムのサイズに合致したものであると細胞認識がなされて何らかの応答が起こる。細胞の接着は形態を維持する効果だけでなく,機能の面でも極めて意義深いものであり,細胞接着の様式を操ることによって細胞挙動を制御することが可能となる。固い基材に縁あるいは溝がある場合には,それに沿って移動,伸展,および突起伸長が誘導される。正しく細胞を形作る方法がわかれば,組織再生におけるニッチを与えるための技術の基礎となる。

3) 機能化足場材料創製への展望 (木村 祐・田畑泰彦)

組織の前駆細胞,細胞の足場となる材料,細胞の増殖・分化を促す液性因子を組み合わせる組織工学的手法を用いて,これまでに様々な組織再生が可能となっている。しかしながら,再生が可能な大きさや再生した組織の機能発現には今のところ限界がある。これを克服する指針を得るため足場材料の機能化に着目し,現在用いられている材料および必要な条件や機能について述べるとともに,足場材料へ新たな機能を導入した研究や新しい材料を作製するための技術について紹介する。
4)

複合材料 (菊池正紀・田中順三)

再生医療では,細胞の増殖・分化の環境を整えることにより,失われた組織と機能の再生を目指す。これには,細胞を受動的に利用する「組織誘導再生法」と,能動的に利用する「組織工学」の2つのアプローチがある。本稿では,骨の再生医療におけるこの2つの手法への応用を目指した有機/無機複合材料(組織誘導再生複合膜材料とアパタイト/コラーゲン自己組織化ナノ複合体,人工細胞外マトリクス)と,それらの材料設計・動物実験による再生効果の確認を例示して,再生医療における複合材料の現状と将来展望について解説する。

5) 異形断面繊維と不織布 (菅埜幸治)

医療分野で使用される繊維素材は,その形状,素材など多種多様にわたっており,安全性の高い合成繊維素材が使われることが多い。それら繊維素材の中でも紡糸工程を伴う不織布製造技術のスパンボンド法,メルトブロー法,フラッシュ紡糸法,エレクトロスピニング法は極細化・異形断面化の方向に進み,医療用途への取り組みが活発に行われていくと思われる。なかでも,エレクトロスピニング法はナノサイズのファイバー作製法として注目されており,新しい機能性不織布として期待されている。
6) 多孔質高分子中空糸膜 (宮城守雄)

多孔質高分子中空糸膜の医療分野での適用例として,腎不全患者の治療に用いられている中空糸型腎臓用透析膜に関して,膜素材,要求性能,膜とタンパクとの相互作用などを紹介し,次に中空糸膜の細胞への関わりについて簡単に紹介する。中空糸膜と細胞とを組み合わせたハイブリッド型人工臓器の実用化に向けての開発が,中空糸膜の機能の飛躍につながると楽しみにしている。
2.細胞培養関連材料,技術
1) 動物細胞培養装置 (高木 睦)

動物細胞大量培養は医薬品生産の手段としてだけでなく,ハイブリッド型人工臓器や再生医療の実現のためにも欠かせない技術となっている。特に接着依存性細胞培養器としては,ローラーボトル,セルファクトリーTM,マイクロキャリアー培養,中空糸膜モジュール培養器,ラジアルフローリアクターなどが従来からあるが,多孔性担体を用いた3次元共培養や多孔性膜を用いた隔膜共培養も再生医療用の培養には有効である。これらの培養器の運転管理に際しては,せん断力や溶存酸素濃度への配慮が不可欠である。また,これらの組合せだけでなく,再生医療用培養装置に固有の工学的課題もあるはずである。
2) 物理刺激とその再生医療への応用 (牛田多加志・古川克子)

生体組織の多くは生理的な条件では絶えず物理刺激を受けている。そして,これらの物理刺激は,細胞の増殖制御,細胞の形質維持,さらには組織形成においても重要な働きをしていることがわかってきた。これらの物理刺激を生化学刺激と並んで,生体外での組織形成に適用することは合理的であり,ティッシュエンジニアリングの基盤技術の1つとして今後の発展が期待されている。これまでに,静水圧刺激下での軟骨組織再生,ずり応力・引張応力下での血管組織の再生などが試みられてきている。
3) 無血清培地 (高橋秀和)

再生医療では,安全性の面からウシ血清の使用を回避する必要がある。そのため,培地の無血清化,低血清化が必要である。これまでの研究から,細胞培養における血清の役割とそれを代替しうる組成が解明されつつある。これらの知見に基づき無血清化の検討を行うが,目的とする培地を得るためには相応の試行錯誤を要する。培地組成の検討は地味な作業であるが,再生医療の実用化に際しては意義は大きい。
3.遺伝子関連材料,技術
1) 遺伝子ハンティング:HVJ envelope vector によるゲノムライブラリーの迅速スクリーニングおよび高効率遺伝子機能解析システムの開発 (金田安史)

ゲノムプロジェクトによってゲノムシークエンスが明らかになった現在,3万から4万種類と推定されているヒト遺伝子の機能解析を迅速に行うハイスループット(大量・迅速)スクリーニングの国際競争が激化している。その根幹のテクノロジーは,高効率で低侵襲の遺伝子導入法であり,それを利用した大量・迅速の遺伝子機能解析法である。われわれは,独自に開発してきたHVJ envelope vectorがこの目的のために極めて適しており,実際にこのベクター系を用いた遺伝子機能の大量・迅速スクリーニング法を確立し,多くの治療遺伝子の分離に成功している。
2) 遺伝子発現を高めるための遺伝子デリバリー技術 (櫛引俊宏・田畑泰彦)

治療用遺伝子を生体内へ投与する場合,ウイルスを遺伝子キャリアとして用いた方法が行われている。しかしながら,キャリアとして用いたウイルスに起因すると思われる免疫性ショックや白血病の発症の事例が報告され,あらためて安全性の高い遺伝子デリバリー技術の開発が望まれている。本稿では,遺伝子を安全に細胞内あるいは生体内に導入する方法としての遺伝子デリバリー技術を紹介する。
3) 小さなRNAの再生医療への可能性 (多木 崇・多比良和誠)

かつてはジャンクDNAと呼ばれていた,タンパク質をコードしていないゲノム領域から発現する小さなRNAが,遺伝子の発現抑制を通して細胞の運命を決定するという大きな役割を果たしていることがわかってきた。また,われわれがこの遺伝子抑制機構を利用して遺伝子のノックダウンを簡便に行うことが可能になってきている。以下に,最近注目を浴びているこの細胞内在性のメカニズムが巧みにRNAを利用している様子を概観し,再生医療に対するアプローチの一端を紹介したい。
4. 自由電子レーザーの分子レベルにおける医療応用 (鈴木幸子・粟津邦男)

レーザーの医療応用は大きな進歩を遂げており,臨床において,多種のレーザー治療が従来の治療法と代わりうるものとなっている。特に,中赤外域において発振波長を任意にかつ連続的に走査可能な自由電子レーザー(FEL)は,生体組織細胞の特定部位を選択的に励起可能であることから,低侵襲治療・診断が実現できるとして注目を集めている。大阪大学自由電子レーザー研究施設は,FELを用いた応用研究のため開放されている世界的に数少ない研究施設である。本稿では,FELの発振原理および特徴と,FELによる医療応用研究の可能性と臨床応用への可能性を紹介する。
第3章 細胞,組織,臓器の評価法
1. MR画像を用いた移植幹細胞の生体内無侵襲トレーシング (犬伏俊郎)

再生医療や細胞治療で用いるES細胞などの治療用細胞を生体内で非侵襲的に可視化する技術が望まれている。その1つの方法として,核磁気共鳴(MR)法を利用する移植細胞の無侵襲追跡が可能になってきた。本稿では,MR法が移植細胞の識別を可能にする細胞標識法と実験動物における標識細胞の長期無侵襲追跡などを紹介するとともに,併せてMR細胞追跡法の臨床応用について展望する。
2. バイオ・医学領域における非侵襲的可視化手段としてのMRマイクロイメージング (中井敏晴・当間圭一郎)

磁気共鳴画像法(MRI)を応用したMRマイクロイメージング(MRmI)は,組織レベルの形態的・機能的変化を極めて非侵襲的に可視化できる有用な方法である。MRmIは,通常10〜100μ程度の空間分解能で用いられるが,微小な容積から信号を得るために,測定感度を向上させるための様々な技術開発が試みられている。また,造影効果のある物質と特異的な標識物質を組み合わせたトレーサーによる特異的なイメージングの手法も注目され,遺伝子発現による酵素活性のマッピングや神経幹細胞の動態追跡に応用されている。
3. 再生硬組織への結晶学的アプローチによる構造・機能評価 -微小領域X線回折法を用いて-  (中野貴由・馬越佑吉)

生体硬組織ならびに,その再生組織に対する新たな構造・機能評価法として,X線回折法を用いた結晶学的アプローチを紹介する。この評価法は,硬組織の石灰化成分である生体アパタイト(BAp)ナノ結晶が,特定軸(c軸)方向に沿った結晶学的異方性を示すことに注目したもので,BApの密度(骨密度)を解析する従来の方法とはまったく異なる。微小領域X線回折法によると,硬組織中のBApは,最適な力学機能を発揮するために,生体部位に応じた特徴的なc軸配向性を示す。さらに,その配向分布は,in vivo 応力をはじめとする外的因子の作用に対し極めて敏感である。こうした特性からBAp配向性を指標とすることで,硬組織の機能再生度合いの評価,再生過程の解明,疾患形成の診断などが可能となる。
4. 画像解析-微小血管造影- (知久正明・西上和宏・内藤博昭・盛 英三・佐藤英一)

狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患や閉塞性動脈硬化症に対する新しい治療戦略として血管再生治療用解1)が期待されている。実際の臨床では,血管造影を含めた臨床検査で臨床症状の効果を十分には反映していない。これは,既存の血管造影装置の解像度は約200〜300μmであり,再生される新生血管は約100μm以下の微小血管であるからである。微小血管造影の先駆けとなったシンクロトロンによる微小血管造影法用解2)は200〜500μm以下の微小血管の定量と50〜200μm以下の微小血管の可視化が可能である。さらに,臨床の場で簡便に使用できる微小血管造影装置も開発された。本稿では,再生治療後の微小血管の評価方法について概説する。
5. 再生医療を具現化するための基盤技術としての光計測・評価技術 (石原美弥・佐藤正人・持田讓治・菊地 眞)

再生医療を具現化するための基盤技術である計測・画像技術は,非侵襲的に同一固体を経時的に計測できることが望ましい。これにより,治療前診断,および治療計画,導入細胞・組織の品質管理,術中モニター,経過観察の一貫した評価,すなわちバリデーションが可能になる。これらの一連のコンセプトを図示した。また,研究の進展が著しい光生体計測・イメージングの分野で特に医療現場に持ち込める実用性に優れた技術(OCT,光音響法)を紹介し,さらに再生医療評価のために取り組んでいる筆者らの研究をまとめた。
6. 血管の成熟化 (高倉伸幸)

脈管形成や血管新生の過程で形成された血管は,壁細胞の内皮細胞への動員・裏打ちを伴い,構造的に安定化するとともに,組織に十分な養分や免疫細胞の供給をつかさどるために血管透過性を制御できるシステムを構築する。これらの過程には成長因子を主体とした数多くの結合因子ー受容体システムや,接着分子,マトリクスが関与していることが明らかにされつつある。これらの血管の成熟化の分子機序が明確になることで,血管の再生,あるいは逆に腫瘍血管形成を抑制する新しい治療概念が発生することが予想される。
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