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序論:メタボロミクスの概念と戦略
- 包括的プロファイルから差異や類似性を見出す -
(田口 良)
メタボロミクスは生命科学における包括的・網羅的な研究手法の1つであり,DNA,
RNA,タンパク質以外の生体内のあらゆる代謝産物を対象としている。質量分析法を用いた生体分子の包括的解析により正常あるいは病態生物のサンプルのプロファイルを比較し,その差異や類似性を知ることにより……
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第1章 メタボロミクスの基盤技術 |
1.メタボロミクスにおける分析手法(基礎編) |
1) |
メタボロミクスにおけるLC/MSの特徴と有用性 (宮野 博)
LC/MSは,植物の二次代謝産物や脂質などメタボロミクス分析の中で比較的限定された対象に用いられることが多かったが,ミックスモードといわれる固定相の開発で,アミノ酸,有機酸,核酸塩基,ヌクレオシド,ヌクレオチドをLC/MSで直接,一斉に測定できるようになった。……
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2) |
メタボロミクスによる包括的解析のストラテジー
- 対象を定めない網羅的解析手法と特定の分子を対象とした特異的解析手法をいかに組み合わせるか
- (田口 良)
メタボロミクスの対象は非常に多岐にわたる。メタボロミクスにおいて網羅的という言葉は,その主たる特性を意味すると同時に,その困難性,限界をも示している。生体からの代謝物の抽出過程・分離過程そのものがすでに測定対象を限定する操作である。……
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2.メタボロミクスにおける分析手法(実践編) |
1) |
生体試料を対象にしたLC/MSによる極性代謝物一斉分析 (Khin Than Myint・小田吉哉)
内在性代謝物の網羅的解析は,多様な構造と物性の集合体であることから,現在メタボロームすべてを対象にした標準的な手法は確立されていないと言ってもよい。しかしながら,選択性や検出感度に優れた質量分析(MS)とルーチン性が高く汎用されている高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を組み合わせたLC/MSが最も有望な分析手法であろう。……
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2) |
CE-MSによる癌のメタボロミクス (平山明由・江角浩安・曽我朋義)
キャピラリー電気泳動-質量分析装置(CE-MS)を用いたメタボローム測定法は,各種サンプル中に含まれるイオン性低分子代謝物の網羅的測定に適している。とりわけ解糖系,ペントースリン酸回路,クエン酸回路,アミノ酸生合成,核酸生合成経路の代謝中間体は,そのほとんどがイオン性であることから,本法は中心代謝を解明するうえで有用なツールになると考えられる。……
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3) |
GC/MSによるメタボロミクス (福崎英一郎・馬場健史)
メタボローム(代謝物総体)は,ゲノム情報に最も近接した高解像度の表現型と考えられており,種々のバイオサイエンスに重用されているのみならず,ゲノム情報が必須でないため,実用植物,実用微生物,食品などへの応用展開も期待されている。メタボロームを観測する手法は特に限定されないが,その中でもガスクロマトグラフィ質量分析(GC/MS)は,……
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4) |
臨床応用をめざしたトリグリセリド分子種の包括的メタボローム解析 (池田和貴・田口 良)
肥満はメタボリックシンドロームの最上流に位置し,トリグリセリドに代表される中性脂肪の過剰な腹腔内での蓄積により糖尿病・高脂血症・高血圧さらには動脈硬化症を引き起こす。しかしながら,これまでにトリグリセリドを分子種レベルまでにフォーカスした有効な定量および定性分析法が少ないのが現状である。……
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5) |
酸性リン脂質を中心としたリン脂質の分析手法 (小木曽英夫・田口 良)
逆相液体クロマトグラフィ/質量分析(RPLC/MS)法を用いた一般的なリン脂質測定では,ホスファチジン酸,ホスファチジルセリンおよびポリホスホイノシチドの分析は困難であった。本稿では,これら酸性リン脂質を測定するうえで遭遇する問題点と,その解決法となる分析手法を具体的に紹介する。
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6) |
NMR法による代謝表現型解析 - その現状と将来展望 - (菊地 淳)
あたかも,生物が利己的なDNAに情報支配されているかのごとく,遺伝要因に還元する生命科学研究が横行している。しかし,生命活動という表現型は,温度・乾燥などの物理的,栄養・飢餓などの化学的,さらには常在菌・寄生などの生物的な環境要因に巧みに応答している。……
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