第2章 DNAチップ/マイクロアレイの最新技術
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1.エピジェネティクス |
1) |
ChIP-chip技術(総論) (古俣麻希子・白髭克彦)
転写,複製,分配,組換え,修復といった染色体諸機能の実体は広い意味でDNA-タンパク相互作用とその変化である。ChIP-chip法とはゲノムDNA上のタンパクの結合プロファイルを網羅的に検出する方法であり,この方法により,今まで生化学的あるいは遺伝学的方法を用いて,部分あるいは点としてしか捉えられなかったDNA-タンパク相互作用を……
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2) |
タイリングアレイのデータ解析 (堤 修一)
一定の間隔ごとにゲノムの塩基配列から選択した配列を,高密度にマイクロアレイ上に設計したものをタイリングアレイと呼ぶ。この比較的新しいマイクロアレイによって,新規の転写産物や,ヒストン修飾や転写因子の結合領域がゲノムワイドに測定できる。現在の解析では,1アレイあたり数百万にも及ぶプローブから得られるシグナルを,プローブ配列やゲノム上に該当するコピー数などによって補正できるようになっている。……
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3) |
メチル化解析 (永江玄太)
メチル化DNA免疫沈降法とタイリングアレイ解析を組み合わせたMeDIP-chip法の登場により,1つの細胞のDNAメチル化状態をゲノム全体にわたって詳細に解析することが可能となった。ゲノムサイズの大きなヒトやマウスにも応用され,1kb以下の解像度で高メチル化領域をマッピングすることができるようになった。……
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4) |
MassARRAY® によるDNAメチル化解析 (金田篤志)
遺伝子発現制御に重要な役割を果たすDNAメチル化については,これまで多くの解析技法が発表されてきた。MassARRAY®(SEQUENOM社)は,解析したい領域の塩基配列の違いによる質量の違いを利用して質量分析する手法である。DNAメチル化解析に応用する場合は,DNAをbisulfite処理しメチル化の有無を塩基配列の違い(CとU)に変換,……
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2.最新技術/システム |
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SuperSAGEアレイ法 (松村英生・寺内良平)
筆者らは,ゲノムワイドな転写レベルの遺伝子発現解析法であるSAGE(serial
analysis of gene expression)法を改良したSuperSAGE法を確立した。SuperSAGE法は各cDNAから抽出した26塩基配列の断片(タグ)により遺伝子発現プロファイリングを行う方法である。この26塩基タグ配列を直接利用したオリゴヌクレオチドマイクロアレイを作製し,遺伝子発現を解析する方法を確立してSuperSAGEアレイ法と名づけた。……
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2) |
高感度マイクロアレイ (土屋創健・清水一治・辻本豪三)
DNAマイクロアレイのスポット部位に柱状構造を有する黒色樹脂の基板とその柱状構造を利用したビーズによる撹拌を用いることで,従来のガラス基板のマイクロアレイと比べて,約100倍高感度なマイクロアレイが開発された。この高感度マイクロアレイは,わずか0.01μgのtotal
RNAから遺伝子増幅を行うことなく正確な遺伝子プロファイルを取得することが可能であった。……
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3) |
電流検出型DNAチップ (源間信弘)
電流検出型DNAチップは,色素標識が不要でかつ検出系がシンプルな構成のため,簡便で低コストなDNA検査の実現が可能である。そのため,現在研究用途では主流の蛍光検出方式に置き換わり,医療診断でのプラットフォームになることが期待されている。本稿では,その原理や特徴,テーラーメイド医療への応用として……
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第3章 データ解析法 |
1. |
発現マイクロアレイデータ解析(概論) (星田有人・油谷浩幸)
遺伝子発現解析のためのDNAマイクロアレイは,トランスクリプトームの状態や構造を捉えるために広く用いられるようになった。そのデータは,発現の異なる遺伝子の同定,サンプルの分類(クラスタリング,機械学習)のみならず,遺伝子・疾患・薬剤などの間の相互作用やネットワーク解析にも用いられている。……
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2. |
マイクロアレイデータ解析法 (牛嶋 大・宮田 敏・松浦正明)
臨床検体を用いたマイクロアレイによる遺伝子発現解析の目的として主なものは,新たな表現型の分類や発見,患者の表現型と関連する遺伝子の抽出,遺伝子発現プロファイルで表現型を予測する予測システムの開発がある。本稿ではマイクロアレイデータの前処理について概説し,……
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3. |
遺伝子発現データベース (山本尚吾)
生命科学の情報基盤としてのデータベースが急速にインターネット上に拡充されつつあり,特に網羅的遺伝子解析技術であるDNAマイクロアレイの普及により,多種多様なサンプルに関する膨大な遺伝子発現データが蓄積しつつある。生命現象の解明のために遺伝子発現データベースを活用した統合的アプローチが試みられているが,……
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4. |
遺伝子セットを使った発現情報の解析(GSEA解析) (辻 真吾)
DNAマイクロアレイの実験結果を解析する場合,コントロール群との比較である程度の発現変動を示す遺伝子を抽出すると,膨大な遺伝子のリストになり,生物学的な意味を捉えることが困難になる。遺伝子セットを使った解析では,こういった問題を解決できる可能性がある。……
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5. |
インタラクトームからのパスウェイ解析 (井原茂男)
タンパク質・遺伝子の相互の関係性,特に分子間の相互作用を網羅的に調べ上げ,時間および空間的な相互作用の変化から細胞の中の現象を理解しようとするアプローチはインタラクトームと呼ばれている。相互作用をエッジに,タンパク質をノードとする相互作用ネットワークとして表現し,現象をネットワークの変化としてとらえる。……
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