編集後記

 この度,遺伝子医学の復刊第15号を発行できる運びとなりました。本号では,希少・未診断疾患に対してオールジャパン体制で疾患原因遺伝子を同定するプロジェクトである未診断疾患イニシアチブ(IRUD)の成果を更に進展させるための「IRUD- Beyond:小型モデル生物および患者iPS細胞を用いた希少・未診断疾患へのアプローチ」を特集の テーマとし,国立遺伝学研究所 人類遺伝研究室教授の井ノ上逸朗先生にコーディネーターをお願いいたしました。今回は,モデル生物コーディネーティングネットワークプロジェクト(Japanese Rare Disease Models & Mechanisms Network:J-RDMM)の概要から,ゼブラフィッシュ,ショウジョウバエ,線虫,iPS細胞を用いた研究,IRUD解析拠点から見たJ-RDMMについて,それぞれの領域の第一線で解析されている先生方にご執筆いただき,大変魅力的な内容にしていただきました。
 特集以外では,「Research(ヒト遺伝子研究最新動向)」として「古代ゲノム研究の最先端」(3回シリーズの第1回),「Technology(技術)」として「クロマチン高次構造解析」,「Method(研究手法)」として「疎水性メタボロミクス(リピドミクス)解析」をご紹介いただきました。本号では「目で見てわかる遺伝病」として整形外科編が始まり,第1回目として「軟骨無形成症」を,「Learning」として「QT延長症候群」,「GPI欠損症」,「病原体遺伝子検査とその臨床応用」についてご解説いただきました。遺伝カウンセリングのコツでは,取り扱いが難しい「意義不明バリアント」についてご執筆いただきました。鎌谷洋一郎先生には,「遺伝統計学の基礎」をシリーズ⑫まで連載いただき,心より御礼申し上げます。また,今回の「私の遺伝カウンセリング日記」には石巻赤十字病院の安田先生,Ties 絆はRB(網膜芽細胞腫)ピアサポートの会様にご執筆いただきました。今回の号も実用的な内容が多く,非常に充実した号となりました。最後になりますが,本誌編集にご協力いただきました皆様に心より御礼を申し上げます。第16号以降もご指導賜りますようお願い申し上げます。

令和4年2月21日
編集委員
国立国際医療研究センター研究所 疾患ゲノム研究部
三宅紀子