編集後記

 多くの皆様のお力をいただき,遺伝子医学が2018年10月に復刊されて以来,ついに2桁号となる復刊第10号を発行できる運びとなりました。
 本号の特集は,「着床前診断」です。特集コーディネーターは藤田医科大学総合医科学研究所分子遺伝学研究部門教授の倉橋浩樹先生にお願いいたしました。生殖・周産期領域は社会的にも注目を集めており,遺伝子医学の特集として復刊後に取り上げるのも復刊第3号の「周産期の遺伝医学」に引き続き2度目になります。2004年に国内で初めてデュシャンヌ型筋ジストロフィーを対象として認められたPGT(当時はPGDとまとめていました)ですが,均衡型転座を背景とした習慣流産が適応として認められてから大幅に増えました。また,近年は反復体外受精・胚移植(ART)不成功例,習慣流産例(反復流産を含む),染色体構造異常例を対象としたPGT-Aの臨床研究が始まっています。さらに,2020年からは遺伝性腫瘍をPGT-Mの対象とするかどうかの議論も行われており,社会的にも注目されております。今回は着床前診断の技術の進歩と見えてきた課題について,それぞれの専門を代表する立場の先生方にご執筆いただきました。
 特集以外では「がん細胞で染色体が失われるのはなぜか?」と題したHot Topics(話題),「単一遺伝病に対する遺伝子治療」のResearch(ヒト遺伝子研究最新動向),遺伝性疾患や技術をシリーズで学ぶためのLearning,Lecture,Method,Technologyもこれまで同様に充実した記事を集めることができました。巻頭の「目で見てわかる遺伝病」は耳鼻科編が終了し,今回から皮膚科編が始まりました。第1回は「表皮水疱症」を取り上げていただきました。ヒト以外の遺伝子に関する研究を連載するNEXUSでは「生命医科学における霊長類のiPS細胞」というテーマをご執筆いただきました。遺伝カウンセリングのシリーズの「Genetic Counseling(実践に学ぶ遺伝カウンセリングのコツ)」と「CGC Diary(私の遺伝カウンセリング日記)」は長崎大学と岐阜大学の認定遺伝カウンセラー®にご執筆いただきました。「Ties 絆(当事者会,支援団体の紹介)」の3回目はPXE JAPAN様にご執筆いただきました。最後になりますが,本誌編集にご協力いただいた皆様に心より御礼申し上げるとともに第11号以降もご指導賜りますよう引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
令和2年11月25日
編集幹事
京都大学医学部附属病院遺伝子診療部
山田崇弘