編集後記

 この度,遺伝子医学の復刊第5号を発行できる運びとなりました。2018年10月に復刊第1号を刊行した遺伝子医学は皆様のおかげをもちまして4号までを無事発行し,ようやく1年を経過して2年目に入ることができました。
 本号の特集は,日本遺伝学会が一昨年「優性」「劣性」に代えて「顕性」「潜性」を用いることを提案したとの報道をきっかけとして大きな注目を浴びた遺伝用語をテーマとしました。コーディネーターを日本人類遺伝学会で本件をご担当されている札幌医科大学医学部遺伝医学の櫻井晃洋先生にお願いし,「遺伝用語を考える」といたしました。歴史的経緯,生物系学会の考え方,医学系学会の考え方,そして言語としての位置づけやメディア・教育の面から,それぞれの専門を代表する立場の先生方にご執筆いただきました。
 特集以外では再生医療の中でも特に注目されるiPS細胞を使用した網膜疾患治療を扱ったHot Topics(話題),複製ストレス応答によるゲノム安定化メカニズムについてのResearch(ヒト遺伝子研究最新動向),そして遺伝性疾患や技術をシリーズで学ぶためのLearning,Lecture,Method,Technology,Statistical Geneticsもこれまで同様に充実した記事を集めることができました。特に巻頭の「目で見てわかる遺伝病」は,今回からは眼科疾患編から変わって京都大学医学部附属病院の岡野高之先生にお願いし,耳鼻科編になりました。初回は「神経線維腫症U型」を取り上げていただきましたが,今後も楽しみなシリーズになりました。一方,今回はReview記事としては片親性ダイソミーを取り上げました。また,ヒト以外の遺伝子に関する研究を連載するNEXUSでは,今回は性決定遺伝子に焦点を当て,非常に興味深い原稿をご執筆いただきました。遺伝カウンセリングのシリーズも本号では,循環器疾患(Genetic Counseling)と甲状腺・副甲状腺疾患をテーマとした認定遺伝カウンセラーRの声(CGC Diary)を取り上げております。本誌編集にご協力いただいた皆様に心より御礼申し上げるとともに第6号以降もご指導賜りますよう引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。

令和元年8月21日
編集幹事
京都大学医学部附属病院遺伝子診療部
山田崇弘