編集後記

 この度,遺伝子医学の復刊第4号を発行できる運びとなりました。復刊した遺伝子医学は季刊誌ということでスタートしたため,ようやく1年ということになります。遺伝医療・ゲノム医療の大きな変革の時代の中で生涯教育のツールとして,また基礎研究と臨床遺伝とを,あるいは各臨床専門分野と遺伝子医療部門とを結ぶ架け橋としての役割も期待され,復刊した本誌は今後ますます真価が問われることとなります。
 本号の特集は,コーディネーターを慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センターの小崎健次郎先生にお願いし,「未診断疾患イニシアチブ:使命・成果・展望」といたしました。臨床的な所見を有しながら通常の医療の中で診断に至ることが困難な患者さんたちはdiagnostic odysseyの中で苦しんでこられました。こういった未診断疾患をもつ患者さんの情報共有と診断確定,そして治療を見据えた病態解明やシーズ創出を目的として平成27(2015)年から始まった未診断疾患イニシアチブ(Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases:IRUD)について,開始から5年目となる現在の状況と未来展望を第一線でご活躍の先生方にご執筆いただきました。
 特集以外では2016年の日本人によるノーベル生理学・医学賞受賞という快挙の記憶も新しいオートファジーを扱ったHot Topics(話題),X染色体不活化メカニズムに関するResearch(ヒト遺伝子研究の最新動向),4回目となった眼科疾患シリーズの目で見てわかる遺伝病,そして遺伝性疾患や技術をシリーズで学ぶためのLearning,Technology,Statistical Geneticsも充実した記事を集めることができました。一方,ELSI(倫理・法・社会)のテーマではゲノム医学・医療の進展に向けた法的課題についてご執筆いただきました。また,ヒト以外の遺伝子に関する研究を連載するNEXUSでは今回は初めて哺乳類以外に焦点を当ててみました。遺伝カウンセリングのシリーズも本号では周産期医療における遺伝カウンセリング(Genetic Counseling)と腫瘍領域で活躍する認定遺伝カウンセラーの声(CGC Diary)を取り上げております。本誌編集にご協力いただいた皆様に心より御礼申し上げるとともに,第5号以降もご指導賜りますよう引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。

令和元年5月23日
編集幹事
京都大学医学部附属病院遺伝子診療部
山田崇弘